パナソニックが進める人工知能(AI)研究戦略の一端が明らかになった。同社のICT関連の技術者の教育などにより、AI技術者を今後3年で3倍に増やす。

 パナソニックは向こう3年間で、人工知能(AI)技術者を現状の3倍に増やす。同社のICT関連の技術者にAIを学ばせる。

 そのためにAIプロジェクトを複数立ち上げて同社のICT関連の技術者を投入。OJT(職場内訓練)を通してAI技術者の育成に乗り出す。

 並行して、AI研究の専門家を講師として招き、機械学習を中心に画像認識や自動翻訳、自然言語処理、ロボット制御などの基礎講座を開講。ICT関連の技術者にAIの基礎を学ばせる。

AIの応用によって価値を実現

 3つの事業領域でAIを活用する。車載、ビジネスソリューション、住宅・家電の領域だ。それぞれの領域でAIを活用して、安全・快適な移動、高効率かつ知的な業務支援、家事や介護の負担軽減を目指す。

 これまでデジタル家電で培ってきたカメラやマイク、ミリ波レーダー、超音波センサー、イメージセンサーなどと、機械学習や自然言語処理といったAI技術を融合させる。次世代プロジェクション(曲面状スクリーンへの特殊投影技術)や、クルマのフロントガラスに情報を表示するようなヘッドアップディスプレー、ロボット、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)、メガホン型自動翻訳機などを実現、高度化させ、現実社会における価値創造を目指す。

世界5拠点でAI研究開発

 パナソニックのAI研究開発拠点は、グローバルで5カ所だ。(1)同社最大規模の研究拠点である本社地区(大阪府)、(2)1994年4月に京阪奈学研都市の中核研究機関の1つとして旧中央研究所が移転開設した京阪奈地区、(3)2011年に設立したPanasonic Silicon Valley Lab、(4)1990年に発足したPanasonic R&D Center Singapore、そして(5)今年4月に東京・有明に開設したパナソニックラボラトリー東京の5拠点だ。

 本社地区では、本社傘下の先端研究本部に加えて4つのカンパニーの技術部門が集結している。主要事業領域に使われる多くの商品群やデバイス群と、AI技術を融合させた研究開発を推進している。

本社地区(大阪府)の研究拠点
本社地区(大阪府)の研究拠点

 京阪奈地区では、これまで知能情報処理の基礎研究拠点としての役割を担ってきた。とりわけ住宅や家電の分野で知的活動や動作を支援するためのAIとロボティクスの研究と用途開発に取り組んでいる。

 米シリコンバレーの研究拠点では、現地のベンチャー企業などとの連携を通して最先端AI技術の獲得や研究をしており、アルゴリズム開発から機械学習用サーバー環境の構築まで幅広く手掛けている。最近では車載分野に注力して、ディープラーニングを活用したリアルタイム歩行者検出アルゴリズムの研究開発に取り組んでいる。米スタンフォード大学とも共同研究をしている。

最近では車載分野の研究に注力しているPanasonic Silicon Valley Lab
最近では車載分野の研究に注力しているPanasonic Silicon Valley Lab

 シンガポールの研究拠点では、画像認識技術に関してシンガポール国立大学と共同研究を進めている。ビジネスソリューション分野の幅広いテーマに対してアルゴリズムの開発や、システムの実装、性能の最適化などの研究開発に取り組んでいる。

 パナソニックラボラトリー東京には、AIやIoT(Internet of Things)、ロボティクス、センシング関連の技術者が集結しており、AI関連のスタートアップ企業と共同研究に取り組んでいる。主に新規事業創出につながる研究を加速している。