富士フイルムは、紙のダイレクトメール(DM)を活用し、特定の顧客に対するリーチを底上げし、売り上げの向上に結びつける新施策に乗り出した。「アナログのDMもデータを活用した一連のマーケティング活動に取り込むのが狙い」(e戦略推進室の藤堂正寛氏)。

 今回、ターゲットとしたのは全く異なる2つの層だ。A層は昨年11月から今年1月に同社の年賀状印刷サービスを利用した顧客で、その後はサービス利用がない顧客。RFM分析のF(頻度)が1の顧客で、「他のサービスも知ってもらい、リピーターになっていただきたい」(e戦略推進室の一色昭典マネージャー)。

 2つ目が同社のサービスをよく利用するB層だ。いわゆるファン層で「日頃の購買に対して、感謝の気持ちをDMで伝えたい」(一色氏)。

 それぞれ約4000通ずつ郵送した。それぞれ、メールマガジンを送付可能な人2000通、送付不可の人2000通に分けている。

 DMにランディングページ(LP)で入力するキャンペーンコード(キー)を記したり、スマートフォン用に個別の2次元コードを印刷したりして、LPを訪れた顧客を識別した。

 いずれも約1500円に相当する紙のフォトブックを無償で提供することでLPに誘導する。ここでの重要指標がアップセル率だ。無償枠を超える枚数の写真印刷や銀塩写真の高品質印刷は有償となる。

45%の顧客がLPにアクセス

 A層では、DMに記した手順によるLPへのアクセスが全体の45%に達した。これは通常の電子メールのクリック率に比べ3倍超に相当する。

 さらにB層ではLPのアクセスは37%と多少低いが、アップセル率はAと同じ24%。これも電子メールに比べて約3倍だ。特筆すべきは、B層でメルマガの送付不可の顧客。アップセル率が28%にも達した。

 Webサイトの改善にもデータをフルに活用する。顧客のマウス操作を取得する改善ツールを導入し、ユーザーのマウス操作が迷っていないか、意図したエリアに到達しているかを分析してきた。

 同様のフォトブックでのキャンペーンで、2年前に8%だったアップセル率をPDCAを回し続けることで、2017年には3割まで引き上げることができた。

 今回も改善後のサイトを活用しており、アップセル率の底上げに寄与したと考えられる。

紙のDMによる訴求効果の数値的な検証
紙のDMによる訴求効果の数値的な検証
実施と効果検証で、日本郵便と博報堂プロダクツの支援を得た
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