4月18日、大阪のホテルに20社以上のスタートアップ企業が集結。「ロボット・AI」や「フィンテック」「IoT・IoE」「メディカル・ヘルスケア」など6つの分野で新しい技術や事業アイデアのコンテストが開かれ、大企業の社員や投資家など約200人が参加して25件のプレゼンに聞き入った。

 このイベントはピッチコンテスト「未来2016」。企画したのは、三井住友銀行とグループの日本総合研究所(東京都品川区)が今年2月に設立した異業種連携の事業コンソーシアム「Incubation & Innovation Initiative(III=トリプルアイ)」だ。

 コンソーシアムメンバーにはトヨタ自動車とNECが名を連ねているほか、「今年6月までに損害保険や商社、通信、出版、電力、不動産ディベロッパーなどの大手企業、研究機関やファンドなど10~15社が加わる予定」(三井住友銀行)という。

 多様な専門性を持つコンソーシアムメンバーが、スタートアップ企業のビジネスアイデアや新しい技術を事業化するイノベーションエコシステムの構築を目指す。

 「ピッチコンテストを定期的に開催してシーズを発掘。大企業との連携やベンチャーキャピタルの出資などによって事業のステージを上げていく。全産業を対象にしているのが特徴。コンテストを通して技術のトレンドを明らかにできる」(日本総研)。

 今回のピッチコンテストは、今年2月に東京で行われた49件のプレゼンで選抜された25件の最終審査会という位置づけ。各部門に1件ずつ優秀賞が選出され、受賞した企業や組織は、日本総研による事業支援を受けられる。

 ロボット・AI部門では、人の対話や思考の推移・傾向を数値化できる独自技術を持つコグニティ(東京都品川区)が優秀賞を受賞。表彰式には、三井住友銀行の橘正喜・代表取締役兼副頭取執行役員や日本総研の渕崎正弘社長らが参加。グループとしての力の入り具合がうかがえる。

ロボット・AI部門で優秀賞を受賞した、コグニティの河野理愛社長(中央)と、三井住友銀行の橘正喜・副頭取(左)、日本総合研究所の渕崎正弘社長(右)
ロボット・AI部門で優秀賞を受賞した、コグニティの河野理愛社長(中央)と、三井住友銀行の橘正喜・副頭取(左)、日本総合研究所の渕崎正弘社長(右)

売れる営業と売れない営業の分析

 コグニティの設立は2013年3月。様々な分野における専門家の秘訣や独自性を定量化し、バイアスにとらわれずに社員などの潜在的な課題を評価できるサービス「UpSighter」を展開している。「売れる営業と売れない営業の差は何か」を定量的に分析できるほか、社員教育など用途は広い。

 具体的には、顧客は交渉や会議などの録音データ、作成済みの資料・レポートなどをアップロードすると、1週間以内に解析レポートを受け取ることができる。レポートには、論理度や重要論点ランキング、改善の結果で見込める効果、話題の関係性の強さ、懸念点一覧、重要な話し合いの流れなどが盛り込まれている。

 河野理愛社長は「これまで属人的で定性的な評価しかできなかった対話や思考の推移・傾向を数値化できるようになったのは、当社の独自技術である『CogStructure』にある。認知言語学者のスティーヴン・トゥールミンが提唱した論理的な議論モデルを基に、非論理的な議論・思考・対話にも対応できるように作り直した議論モデルだ」と説明する。今年初めから営業活動に入り、既に2~3カ月活用している企業は8社。これから10社が導入する。

この記事をいいね!する