札幌市が今年2月までに行った、無料Wi-Fiを活用した訪日外国人旅行客の人流を可視化する実証実験で、中国人が特定の観光スポットを団体で動いていることが判明した。

 「使用する言語によって、立ち寄る観光スポットが違っていたり、移動する範囲が広かったり、狭かったりする。そして相関が強い観光スポットが明確に分かった」。

 こう話すのは、札幌市観光・MICE推進部の塩澤久美子係長。例えば、中国語簡体字を使う中国人の場合、地下鉄大通駅や大通公園、地下鉄円山公園駅やJR札幌駅観光案内所などと、地下鉄宮の沢駅を経て白い恋人パークにつながるネットワーク型の太い動線が明確に出た。

 この結果は、1月26日から2月28日まで実施した実証実験「Sapporo City Wi-Fiログデータを活用した着地における観光誘導及び周遊滞留分析実証事業」の一部だ。この期間に中国の春節、「さっぽろ雪まつり」、「2017冬季アジア札幌大会」があり、外国人観光客が多く訪れた。

 実証実験では、まず札幌駅観光案内所に47インチのデジタルサイネージと公衆無線LAN「Sapporo City Wi-Fi(SCW)」を期間限定で設置した。デジタルサイネージで市内の観光スポットを紹介。併せて、スマートフォンで見られるパンフレット「ささっとパンフ」の利用方法を告知して、ダウンロードを促した。

 スマホでSCWにアクセスすると、端末の設定言語に応じたささっとパンフをダウンロードできるようにした。対応言語は、日本語、英語、中国語(簡体字)、同(繁体字)、韓国語、タイ語の6言語。このパンフでサッポロビール博物館や白い恋人パーク、藻岩山展望台などの観光スポットへの誘導を図った。

公衆無線LANの利用を分析

 重点スポット8カ所と観光案内所3カ所の計11カ所に臨時のSCWを設置した。通常のSCW設置場所と合わせて、39カ所のSCWへの接続情報から動線を分析した。

 今回SCWのユニークユーザー数は5万4767人。このうち14%が外国人だった。どの時間帯にどの観光スポットにどのくらいの外国人旅行客が訪れたのか言語別に把握した。

 観光客の多くが活動する午前6時から午後10時までを4つの時間帯に分けて移動量を見たところ、いずれの言語ともに最も移動量が多い時間帯は午後3~6時だと分かった。しかし、言語によって移動する範囲に大きな差が出た。

 例えば、英語では、白い恋人パーク、サッポロビール博物館をはじめ、臨時SCWで計測可能になった全観光スポットへ移動していた。

 一方、中国人は英語に比べて移動範囲が狭かった。その中で、白い恋人パークや円山動物園との移動が多く見受けられた。中国人観光客は団体で行動し、有名な観光スポットを回ったと推察される。英語や中国語繁体字の言語を使う外国人は個人旅行が多く、色々な観光スポットを回っていたとみられる。

時間帯別ミクロフローマップ(2017年1月26日~2月28日 英語 午後3~6時)
時間帯別ミクロフローマップ(2017年1月26日~2月28日 英語 午後3~6時)
白い恋人パーク、サッポロビール博物館、藻岩山展望台をはじめ、計測可能な全観光スポットへの移動が見受けられるほか、定山渓温泉へのチェックインのためと想定される移動が市内中心部各所との間で見受けられる
時間帯別ミクロフローマップ(2017年1月26日~2月28日 中国語簡体字 午後3~6時)
時間帯別ミクロフローマップ(2017年1月26日~2月28日 中国語簡体字 午後3~6時)
観光スポットについては、白い恋人パークや円山動物園との移動が見受けられるほか、他の言語と異なり、地下鉄円山公園駅と同宮の沢駅間の移動が多く見受けられる
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