旭硝子が2010年から導入している人事データベース「スキルマップ」がタイや中国に拡大している。現地の事業所での課題解決に寄与しはじめた。

 昨年、タイの化学系関係会社と旭硝子の千葉工場間でテレビ会議を通じて、工場におけるエネルギー関連のメンテナンス方法に関する教育を実施した。

 教育を担当したのはその分野で十分なスキルを有する、千葉工場にいるリーダークラスの人間。タイ側は、同じエネルギー分野の専門スキルを持ったメンバーが参加した。メンテナンスに関する最適な実施方法やメンテナンススキルに関するレクチャーだった。

 テレビ会議を主催したのは、旭硝子の人事部。タイの化学系関係会社の要望に応える形で実施した。人事部が、現地の悩みに対して的確に対応できるスキルの高い人材をピックアップするのに手間がかからなかった。理由は、人事データベース「スキルマップ」があるからだ。

 旭硝子人事部の寺田一郎・人財開発統括担当部長は「自分と同じ領域で仕事をしている社員と知り合える仕掛けがある。2010年から導入しているスキルマップだ。グローバルで働くホワイトカラー約1万3000人のうち(約6割となる)約8000人が登録している。タイや中国でも2014年ぐらいから現地社員が登録するようになり、交流している。そうした中で、社内でスキルが高い社員を選んで電話会議による勉強会を開いた」と話す。

 部門横断でのコミュニケーションは、まだまだ国内中心だが、「海外との間でもっとやろうと考えている」(寺田部長)という。

専門領域で切磋琢磨、課題解決

 スキルマップの目的は、旭硝子グループのスキル保有状況を見える化することによって、コミュニケーションの促進を図ること。それによって人材の育成や有効活用につなげようとしている。全社員が検索、閲覧できる。ある部署で社員の退職によって欠員が出た場合に、同じ分野の同じレベルのスキルを持っている他部署の社員をピックアップしてすばやく補充することができる。

 さらに、5~10年後に不足するスキルの人材を計画的に採用して将来に備えることができる。新しいプロジェクトを立ち上げる際に、リーダーが知っている人材をメンバーに選ぶのではなく、グループ内で最適な人材を集めることができるという。

 スキルマップは最終的に、グループの全社員約5万1000人のうち約1万3000人いるホワイトカラー全員の登録を目指している。既に国内のホワイトカラーはほぼ100%登録している。

 専門領域は、技術系で28部門、営業・事務職能系で13部門がある。例えば技術系では、 「ガラス材料」や「樹脂設計」などの大分類で分けている。ちなみに中分類は非開示だが、技術系では160ある。営業・事務職能系では、「営業マーケティング」や「会計」などの大分類で分けている。

旭硝子グループが運用するスキルマップのポイント
旭硝子グループが運用するスキルマップのポイント

 社員は専門性の高い順に最大3つまで専門分野を登録できる。それぞれの専門分野で、スキルレベルは、5~1の5段階評価になる。まず社員がスキルレベルを自己申告して上席が確認し、スキルマップ事務局もチェックしている。

 スキルマップに対する人事部の狙いは3つある。(1)同じ専門分野の社員同士で切磋琢磨する、(2)それぞれが抱える問題を解決し合う、(3)(職場に若手しかいなくても)同じ専門領域のベテランが部門を超えて若手を育成する、だ。

 スキルマップによって同じ専門領域を持つ社員が、部門や国を超えて交流することで、新しい技術や製品などが生まれることが期待されている。