LINE(東京都渋谷区)は3月、データ専門の研究開発組織「LINE Data Labs(ラインデータラボ)」を新設した。人材採用を積極化させているが、その中で新たに定めた「データプランナー」職の役割がデータ活用を浸透させる上でカギを握りそうだ。

 これまではニュースやゲームなどサービス部門ごとにデータ分析チームを置いていたが、サービスを横断したデータ活用によってLINE全体のユーザー数、利用頻度を高めていくことを目指して、全社組織を新設した。

 約2億1500万人のアクティブユーザーのサービス利用、公式アカウントの登録、スタンプの購買情報などが分析対象のデータとなる。電話番号、トークなどの機微情報は含まれない。

 新設に伴い、分析を担当する「データサイエンティスト」「機械学習エンジニア」「サーバーサイドエンジニア」「データプランナー」の4職種の人材を積極的に採用していく。ラボは2016年中に50人体制にすることを目標としている(現状の人数は非公開)。

 中でもデータプランナーとはやや聞き慣れないが、「LINEが提供するサービス企画・運営で必要とされるデータに関して企画・開発をリードする業務に携わる」業務だという。これまでも同業務を担う人材はいたが、今回改めて業務内容、求めるスキルや人物像を定めて募集を始めた。

 その背景には、ラボでデータエンジニアを務める橋本泰一氏が持つ問題意識がある。「サービス側の希望をデータサイエンティストが全部ヒアリングしていると、分析をする時間がなくなってしまう」ことだ。

3つのスキルは組織力で達成

 データサイエンティスト協会(東京都港区)は、データサイエンティストに求められるスキルを「ビジネス力」「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」の3つと定めている。

 サービスを運営する現場の課題を理解して、分析上の課題に落とし込み、解決策を見いだしていく「ビジネス力」が最初の段階で求められる。

 しかし、橋本氏は「優秀な分析者がコミュニケーション能力に優れているとは限らない。個人的には、データサイエンティストは分析を主な仕事にしてほしいと考えている」と語る。

 そこで、サービス部署に対するラボの一次窓口となり、現場の課題を聞き出して分析課題に落とし込んだり、簡単な分析とレポートをこなしたりするような役割をデータプランナーと位置付け、採用していく。データサイエンティストと同人数を配置する想定だ。

データサイエンティストに求められる3つのスキルセット(データサイエンティスト協会制定)と、LINEが求める人材
データサイエンティストに求められる3つのスキルセット(データサイエンティスト協会制定)と、LINEが求める人材

 具体的にどんな役割を担うのか。LINEはこの3月に、「LINEニュース」でユーザーごとに最適なニュースを薦めるレコメンド機能を実装した。データサイエンティストは、純粋にクリック率などの指標が最も高くなる予測モデルを作り込む。しかし、サービスの現場からは、そのモデルが「ユーザー目線では心地よくない」との意見が上がってきたという。では、ユーザー目線では何が求められているのかを聞き出して、何を目標にモデルを作るのかといった分析の課題へと落とし込むのが、データプランナーの業務の一つとなる。

 LINEはデータプランナーの募集要項で、「webサービス/アプリの運営経験」などを必須のスキルと指定し、「同僚や取引先と円滑な人間関係を築けるコミュニケーション力」を求める人物像として示す。データ分析の能力は求めていない。

 「(ビジネス力、データサイエンス力、データエンジニアリング力)の三角形の頂点は組織でサポートする。データサイエンティストはアナリストに特化した人を想定している」と橋本氏は語る。

 データプランナーの業務経験を足がかりにデータサイエンティストへと転身したり、データ分析の力を付けてサービス部門に戻ったりするようなキャリアパスも想定している。

 こうしたデータ分析の分業体制は、優秀なデータサイエンティスト不足に悩む企業の参考にもなるのではないだろうか。