東日本旅客鉄道(JR東日本)はIoT(Internet of Things)を活用したメンテナンスの高度化、効率化へ投資を進めている。3月7日に営業運転を再開した山手線の新型車両「E235系」で新たなデータの収集も開始。定期的な保全ではなく、状態に応じた「状態基準保全(CBM=コンディション・ベースド・メンテナンス)」の実現へ一歩前進した。

 「ドイツでは第4次産業革命といわれているが、鉄道も人工知能(AI)やIoT、ビッグデータ、ロボットといった技術に乗り遅れるわけにはいかない。技術企画部で研究開発の方針を定めなければいけない」

 総合企画本部技術企画部の中川剛志次長は、新たな技術の活用へ意欲を見せる。

 同社は経営計画「グループ経営構想V(ファイブ)」の中で「ICTを活用した業務革新」を重点取り組み事項の一つとして掲げ、「線路・電力設備のモニタリング装置を山手線などモデル線区へ導入、実用化推進」「山手線E235系量産先行車から得られる車両モニタリングデータの分析に着手」などメンテナンス業務の革新に取り組んでいる。

山手線の新型車両「E235系」
山手線の新型車両「E235系」

 営業用の車両に設備をモニターする装置を付けて、データを収集する取り組みは2013年5月に始めた。京浜東北線に線路設備モニタリング装置を搭載し、カメラでレールの画像を撮影したり、加速度計とレーザーセンサーで線路状態の変化を測定したりして、ねじの緩みや破損など異常の検知を目指している。

 E235系では架線のモニタリングも可能にした。走行に応じてすり減っていく状態のデータを取得する。

 こうしたデータの分析に保全現場の知見も合わせて、異常検知を実現するための検証を進めている段階だ。CBMの前段階として、保全現場で活用するタブレット端末でリアルタイムな設備のデータを表示し、活用してもらうことも目指している。

分析センターを昨年4月に新設

 データ分析はJR東日本研究開発センターテクニカルセンターが担う。「オープンイノベーションを目指して、今まで付き合いがない海外企業、データ分析企業にも依頼をする」(中川氏)ことで新たな知見を取り込む。

 同社のデータ分析はこのほかに、IT・Suica事業本部の情報ビジネスセンターがマーケティング系の分析を中心に担い、2015年4月には総合企画本部システム企画部内にアナリシス・セキュリティセンターを新設した。4~5人ほどのデータ分析担当者がおり、例えばホームドアの故障予測などの分析を実施している。

 IoT活用が効果を発揮するまで時間はかかるが、中川氏は「(JR東日本のような)インフラ企業はメンテナンスの企業だ。モノの状態がリアルタイムに分かり、どう管理すればよいかを把握できれば、経営に大きなインパクトがある」と語る。線路や枕木単位で管理できれば、戦略的に設備投資、修繕予算の計画が立てられる。新設備の導入タイミングに合わせてIoT化を進め、CBMの実現へ歩みを進めていく。

時間基準保全(TBM)から状態基準保全(CBM)へ
時間基準保全(TBM)から状態基準保全(CBM)へ
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