クルマから生まれるIoTデータの量と種類は拡大の一途。収益機会は自動車メーカー以外にも生まれ、異業種との“かけ算”が価値を高める。特集第2回は、道路の維持管理の予算を取り合うという意味では競合になる、富士通交通・道路データサービス、東芝、川崎地質の3社による協業を紹介する。

 道路インフラの老朽化は、日本にとって大きな社会課題になっている。道路の不具合を適切なタイミングで修復しないと、大きな事故につながりかねない。昨年に福岡市博多区で起きた陥没事故は記憶に新しい。

 全国には毎年4000カ所で陥没事故が起きているという。原因は下水管の老朽化によるものだといわれている。陥没の原因を探究する研究も進められるなど、強い関心が寄せられている。

 大型車両が頻繁に通る道路などでは凸凹がたくさんできて、クルマの揺れが多くなる。舗装のひび割れについても、ひどくなる前に再舗装しなければ、思わぬ事故の原因になる。ひび割れを放っておくと、陥没の原因にもなる。道路の状態を正確に把握して、優先順位をつけて適切なタイミングで順次修繕していく必要があるだろう。

平坦性×ひび割れ率×空洞

 こうした道路の様々な状態を“一元化”して見える化するサービスが2017年度上期にも登場する。提供するのは、富士通の全額出資子会社である富士通交通・道路データサービス(FTRD、東京都港区)だ。

 同社のクラウドサービス「道路パトロール支援サービス」に、東芝や川崎地質のサービスもオプションとして利用できるようにする。

 FTRDが提供する道路パトロール支援サービスは、自治体の巡回車にスマートフォンを載せ、そのモーションセンシング機能を利用して、道路の平坦性を解析する。千葉県柏市など10以上の自治体が実務で活用している。

 本年度上期中に同サービスのオプションとして、東芝の「舗装ひび割れ自動解析サービス」と、川崎地質の「路面下空洞探査サービス」を同じ地図上に表示できるようにする。

富士通交通・道路データサービス、東芝、川崎地質のデータ連係によって、 修理すべき道路の優先順位が把握できる
富士通交通・道路データサービス、東芝、川崎地質のデータ連係によって、 修理すべき道路の優先順位が把握できる

 東芝の舗装ひび割れ自動解析サービスは、自治体の巡回車に市販カメラなどを搭載し、画像処理技術により人手による解析作業の省力化を図れる。ひび割れ率や亀甲ひび割れ状況(ひびが集中して道路表面が亀の甲羅のようになる状態)を、専門技術者でなくても直感的に理解できるように可視化する。

 自治体によって基準は異なるが、例えばひび割れ率40%以上なら早期に修繕が必要になり、20~40%は要注意、20%未満は健全といった具合だ。なお、FTRDの道路パトロール支援サービスのデータ収集に使う自治体の巡回車と同じ車両に市販カメラを搭載して、データを収集できる。

 川崎地質が提供する路面下空洞探査サービスは、空洞が発生しやすい下水道のような地下埋設物までの地中を探査するサービスだ。

 パルス圧縮方式のレーダーを複数搭載することで、従来方式と同程度の解像度なら2倍以上の探査を可能にした「チャープレーダー」を利用。国内最高水準である地下3m程度の空洞を探知できるという。

 空洞の状態によって、「要補修」「要経過観察」をそれぞれ示すだ円を表示する。空洞の探査は専用機器が必要になるので、川崎地質が測定する。

 自治体などのユーザーは、道路の平坦性、ひび割れ、空洞状況のどこまで検査するかを決められる。下図には、前述の3サービスに加えてFTRDが提供する大型車両通行量のデータも含めて、どんなデータが入手できるか示した。

道路パトロール支援サービスでは3社が連携
道路パトロール支援サービスでは3社が連携

 「道路を傷めるのは大型車両。どの程度走っているのか把握できれば、今後の傷み具合を予測できる」と、FTRDの島田孝司社長は話す。

 この大型車両通行量のデータは、商用車のプローブデータだ。富士通といすゞ自動車が共同出資するトランストロンは、燃費効率改善や事故減少を支援するネットワーク型運行管理サービスを提供している。FTRDは同サービスの顧客である輸送事業者の商用車プローブデータを分析して、道路利用実態を把握できる「商用車プローブデータ分析サービス」を提供する。このサービスのデータを使えば、道路パトロール支援サービスに大型車両の通行量データを加えることができるのだ。

GPSでの緯度経度が連係のカギ

 3つのサービスおよび大型車両通行量データを連係させる技術的なカギは、GPS(全地球測位システム)で測定する緯度経度データだ。ただし、「単なる緯度経度による位置情報だけではなく、50mや100mといった『管理単位』に関連付けることが一番のポイントとなる」と、FTRD道路データサービスTeamの佐々木博氏は説明する。

 東芝インフラシステムソリューション社社会システム事業部新規ソリューション開発推進部営業担当の近藤浩一部長代理も、「GPSには誤差があるので、同じ地図上に表示する場合に道路の管理単位に合わせるところに調整が必要になるが、やってできないことではない」と話す。

 道路の維持管理の予算を取り合うという意味では競合になる3社。そのデータ連係が実現した背景には、昨年11月に設立された「インフラメンテナンス国民会議」の存在がある。国土交通省が事務局を務める同会議のピッチイベントなどを契機に3社のデータ連係が実現したという。

 川崎地質戦略企画本部営業企画部長の沼宮内信理事は「以前からFTRDのサービスは知っていたが、昨年11月頃にFTRDの方から『できれば話をしたい』という打診があり、コラボレーションすることになった。ちょうどインフラメンテナンス国民会議が設立されるタイミングで同会議に伝えたところ、連係第1号として取り上げていただいた」と話す。

 FTRDと東芝は、インフラメンテナンス国民会議の設立準備期間の昨年8月に開かれたピッチイベントで、それぞれショートプレゼンを行った。その後、国交省から連係を勧められたという。

道路パトロール支援サービスのデータ連係がスタートする経緯
道路パトロール支援サービスのデータ連係がスタートする経緯
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