インテリジェンス(現パーソルキャリア)は転職サイト「meeta(ミータ)」に、データ分析に基づくマッチングエンジン「シゴトフィット」機能を加えて、1カ月で2万人の新規会員を獲得した。求職者の「行動特性」と「仕事への価値感や重視点」をスコア化することで、企業と求職者のミスマッチを減らすことが狙いだ。
第二新卒向け転職サイトが広がるが、従来型の転職サイトは課題を抱えている。インテリジェンスのキャリアディビジョン採用企画事業部meeta開発部の高木寛人ゼネラルマネージャーはこう指摘する。
「営業から別の仕事にキャリアチェンジしたいと思って退職した第二新卒の人が転職サイトにアクセスしても、(営業職を希望していないので)経験とスキルの検索方法では仕事が探せない。スカウトサービスに登録しても、経験がある営業の仕事ばかり提案される」
一方で人手不足に悩む企業も「若くて元気があってコミュニケーション能力があれば育てる」と言うが、実際に採用してみると「うちにはちょっと合わない」と悩むことも少なくない。「求職者はやりたい仕事を、求人企業は求める人材を言語化できていない」(高木氏)のが原因だ。
その間をアルゴリズムで結ぼうというのが、同社が今年1月にサービス提供を開始したシゴトフィットだ。
行動特性と価値感をスコア化

仕事を探す会員は、「プレッシャーの高い状況は緊張感があって好きだ」「初めて会った人ともすぐに仲良くなれる」など自身の行動特性を測る18の質問と、「福利厚生が充実している」など仕事への価値感や重視点を測る8つの質問に答える。18の質問は「向上性」「活動性」など9つの因子に集約され、仕事に対する価値感の8項目とともに自身のスコアをレーダーチャートで確認できる。
企業の側も求める人材像をデータ化するために、行動特性18項目、仕事に対する価値感41項目の質問に回答する。「募集する仕事で活躍している人に回答してもらうことで、活躍する人材に近い人を探せる」(高木氏)のがポイントだ。企業の希望と適合率が高い会員が企業の管理画面に表示され、企業がそこから選んで面談依頼を送る。

面接依頼までには、応募書類の記入や書類選考はない。通常の転職活動から考えるとかなり大胆な手法だ。ここまで割り切ったサービスにできた背景には、これまでの実績があった。
meetaは2015年にオープンした当初から、職種と勤務地域の指定と、適性によるマッチングの大きく2つの方法で仕事を探せるようにしていた。すると、適性によるマッチング利用者の仕事への応募率は、職種と地域による検索の2.5倍に達していた。
「転職サイトはレッドオーシャンなので差異化しないと価値あるモノを作れない」(高木氏)と決断。検索方法を適性によるマッチングに絞ることに決めた。また、若い利用者層を考慮して、面接依頼を受け取れるのはスマートフォンアプリに限定。ユーザーインターフェースをスマホ向けに最適化して、差異化を図った。
求人企業の利用料金は成果報酬制で、現在はキャンペーン価格として1人の採用当たり10万円に設定した。「東京なら中途採用に1人数十万円はかかる」(高木氏)という相場より格安にして、シェアの拡大を急ぐ。
meetaのリニューアル後の初年度の目標は会員数10万人、出稿企業数を3000社に置いているが、開始1カ月(2016年2月末時点)で会員は2万人を新規に獲得して累計4万人、出稿企業は2000社に達した。出稿企業は狙い通り、スキルや経験を求める企業ではなく、第二新卒を求めるような中小企業が多くなっているという。
因子分析で質問数を絞る
meetaの成長のカギを握るのはマッチングの精度だ。当初は質問の設計に頭を悩ませた。精度を高めるためには、行動特性を細かく把握する必要がある。一般の性格診断では100以上の質問に答えるものもある。しかし、転職サイトでそれだけの質問に答えてもらうとなると、登録者が伸びない恐れがある。そこでmeetaのオープン前に100問以上のネット調査を数千人を対象に実施。その回答データを因子分析することで、行動特性を振り分けるのに大きく影響する18問に絞り込んだ。
データ分析では、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS)の岩本隆特任教授の研究室と組んで共同研究を進めている。今後、利用データを見てマッチングのアルゴリズムを改善していく。さらに、適性の判断に利用するデータの拡充も検討している。例えば、企業情報ページの閲覧時に、職場風景や人物などどの画像に注目したかといったような会員の行動データも加えて、仕事への価値感などを判定していく方針だ。
出足は好調だが、転職は応募、採用がゴールではなく、転職者が職場で活躍してこそ成功と言える。シゴトフィット機能が本当に最適なマッチングを可能にするか、検証まではもう少し時間がかかりそうだ。