北海道を地盤として約200店舗のドラッグストアなどを展開するサツドラホールディングスは、地域の課題解決に向け同社のデータやリソースを活用するための団体を立ち上げた。人工知能(AI)を活用した第1号案件は今年4月以降にサービスを始める計画だ。
団体はサツドラ・イノベーション・イニシアチブ(SII)として昨年10月に始動。第1号案件はアプリ開発だ。トヨタ自動車と地域情報案内アプリ「おねがいナビ」に取り組んでいる。
おねがいナビでは、サツドラが北海道で展開している共通ポイントサービス「EZOCA」の属性情報、トヨタマップマスター(名古屋市)がPOI(ポイント・オブ・インタレスト)と呼ぶ施設の最新情報、調和技研(札幌市)が道内のイベント情報のデータなどを活用する。
利用者はEZOCAのIDでアプリにログインし「食べたい」「なりたい」「行きたい」「癒やされたい」「欲しい」「知りたい」「出会いたい」などの“願い事”を入力する。例えば「料理について知りたい」「ストレスを発散したい」といった内容を選択すると、周辺の施設またはイベントの情報をAIがマッチングして提供してくれる。
サツドラグループでアプリを開発するAI TOKYO LAB(東京都千代田区)の北出宗治代表取締役社長は「AIが天気や家族構成を考慮して、『ぴったりのショーがありますよ』などと提案する。受け入れてもらえればレコメンドとして成立し、そうでなければAIがさらに適切な提案を考える。利用者にカーナビなどの目的地以外にも立ち寄ってもらい新しい発見や楽しい体験をしてもらうための仕掛けにしたい」と説明する。
道内の企業や店舗が、情報やクーポンを登録することで、願い事とマッピングすることも検討している。これら利用者や企業が登録した内容がトヨタ側に送られてPOIとなる。
札幌市とは歩数でポイント付与
サツドラはSIIで、札幌市とも連携している。今年2月までの3カ月間、「健康ポイント」の実証実験を行った。1日8000歩の基準を1カ月間クリアすると、EZOCAの500ポイント(500円相当)が毎月もらえるものだ。参加登録で1000ポイント、3カ月連続で達成すると1000ポイントで合計3500ポイントを得られる。
シェア自転車のモバイク・ジャパン(福岡市)とは、サツドラの4店舗に駐輪スペースを設定した実証実験を昨年8月から行っており、SIIの案件に位置づけた。
SIIはこのほか人材育成やワークシェアリングなどの働き方、地域フィンテックなどの金融・通貨といった分野のプロジェクトも想定する。
サツドラホールディングスの富山浩樹代表取締役社長はSIIに取り組む背景を「北海道は少子高齢化や人口減少、過疎化など課題先進地域。日本の縮図と言え、いち早く課題解決に取り組んでいきたい。1社だけでは難しいため、サツドラの持つデータやリソースなどを提供し、企業や団体、自治体などと幅広く連携していく」と語る。