IoTやデータの流通基盤の普及に伴って、企業が利用できるデータの量だけでなく種類も増えている。以前から関係がありそうだと思われていたようなデータや情報同士の相関を定量的に分析できるようになり、活用に向けた説明もしやすい環境が整いつつある。

気象会社が健康サービス開発

 「曇りの日は気分がすぐれない」「どうも雨が降ると、古傷がうずく」

 気象情報会社のライフビジネスウェザー(東京都中央区)は、気象データと身体特性などの情報を掛け合わせ、個人のそれぞれの体に及ぼす直接・間接の影響を予測して、注意を促すサービスを開発している。

 気象と体調や気分などの健康は密接な関係があり、生気象学と呼ぶ理論で説明されるが、「気象については予測手法が発達しているが、疾病などとの関係を裏付ける確固たるものはない。唯一熱中症については学会で意見が一致した指標がある」(ライフビジネスウェザーの石川勝敏代表取締役)という。

 しかし、気温や気圧が急激に変化すると、「体調になんらかの変化が起きる人が出てくるのは一般に知られている」(石川代表取締役)。例えば、気圧が急激に下がると、内耳に影響が出て交感神経が高まる。その結果として血管が縮んで血圧が上昇。それが頭痛や肩こりなどにつながることがあるという。また、気温が急激に上がると、脳梗塞を起こしやすいともされている。

 サービスは「健康みはり」の名称で提供する。利用者はまず登録時に体重や年齢、血圧、心拍数、持病などを入力する。その後、毎日、自覚症状について「体調報告」を行う。

気象と季節で28の疾患を警告

 これらのデータを掛け合わせてその人個別のリスクを分析し、トップ画面に「体調アドバイス」と「生活アドバイス」の2つの情報を提示する。

 例えば、体調アドバイスは「急な環境変化、じめじめで汗をかきやすい、蒸し暑くて肌荒れ気味、アトピー性皮膚炎に気をつけてください」と注意をうながす。気象の変化によって引き起こされる「肩こり」や「腰痛」、季節の変化で起きる「花粉症」や「インフルエンザ」など合計で28種類について表示する。

 一方の生活アドバイスは、季節やその人にあった食事のメニューなどについて情報を提供する。

 健康みはりはコンソーシアムを組織して、産学連携で開発を進めており、医療機関としては奈良県立医科大学などと連携している。提供する情報は医療行為でなくあくまでも「アドバイス」である。

 健康みはりは現在のところ試験サービス中だ。今年4月以降には西日本のある自治体の3000戸で健康みはりの利用実験を一斉に始める。まずはこうしたBtoBでの提供から取り組み、その後にBtoCでの展開を検討する。「消費者向けの場合、月額500~1000円での提供を想定している」(ライフビジネスウェザーの前田充宏取締役営業統括本部長)。

 利用者は自分の体調を毎日入力する。いわば正解データが蓄積されていくわけで、「今後、AIによって天気と健康状態の相関をより緻密に把握し、より個別にアドバイスを出していきたい」(石川代表取締役)と話す。

気象データと掛け合わせることで、疾病や気分の注意を促す
気象データと掛け合わせることで、疾病や気分の注意を促す

眼と体の動きをメガネで取得

JINSは眼の動きを取得することで、集中度などを把握する
JINSは眼の動きを取得することで、集中度などを把握する

 メガネの製造・販売のジェイアイエヌ(現ジンズ、JINS)は眼や体の動きから、人の集中状態や疲労の度合いを把握しようとしている。

 JINSは眼球の動きを把握する3点式の電位センサー、加速度とジャイロで体の動きを把握する6軸のセンサーを搭載したメガネ型デバイス「JINS MEME」を販売している。

 JINS MEMEはアプリをインストールしたスマホとセットで利用する。現在、集中度を図る「JINS OFFICE」、眠気を推定する「同DRIVE」など6つのアプリを提供している。

 このうち企業からはOFFICEへの注目度が高いという。JINSマーケティング室の渡辺里実氏は「ストレスチェックが義務化されたり、働き方改革が話題になったりするなど、個人の体調管理や生産性の重要性が高まっている」と背景を説明する。

 OFFICEは全社導入のほか、人事や総務部門が導入してオフィス環境を調べるといった使い方を想定。JINSがOFFICEのモニター企業を募集したところ、アパレルや人材、IT、消費財など5社が応募した。

 OFFICEを利用して500人で5000時間分の実験をしたところ、1日のうちで集中できる時間帯は4時間程度であることが分かった(下のグラフ)。

 この結果を基にWeb電話帳アプリのPhone Appli(東京都港区)と、クラウド上に蓄積・分析した従業員の集中度合いの情報を連係させることにした(上図の画面)。「集中している従業員には後で連絡しようと判断したり、自身の集中度合いも把握したりすることで従業員全体の生産性向上を図るのが狙い」(渡辺氏)。

 JINSはMEMEの出荷数などについては公表していないが、「全く新しい事業として、様々な方面の企業や団体とアライアンスしながら取り組んでいる。価値を伝え切れていない面がある」(渡辺氏)として、引き続き認知度の向上やアプリ開発者の拡大に取り組んでいくという。

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