トヨタ自動車グループのシステム開発会社であるトヨタIT開発センター(ITC)は、クルマの走行ビッグデータを分析し、危険な運転や事故の起きやすい場所を見いだすシステム「SafetyMeister」を開発した。

 大阪市と連携して、2016年度に実際の危険箇所の改善などに取り組む。対象地域を随時広げていき、2018年以降に危険箇所などのデータをAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)経由で誰でも自由に活用できるようにする。

 大阪市内でも事故が多い北区と中央区、隣接する福島区の3区で、数十台のクルマを3カ月間走らせてデータを取得した。具体的には、位置、速度、加速度、急ブレーキ、急ハンドルのデータである。

 分析をするうえで、2~3人のプロのドライバーにも運転してもらいデータを取得して模範運転としてモデル化。それに対して他のドライバーが急ブレーキや急ハンドルなど乖離した挙動を示す場所を危険な場所として特定した。

潜在的な危険箇所も把握可能に

 トヨタITC開発・調査部の長田祐プロジェクトマネージャーは「データから47カ所の危険な場所が分かった。実際に確認してみると、プロの目から見て本当に危険な場所だった」と言う。

 例えば、中央区のある交差点は危険度が「高」と判断したが、ここでは速度が出やすい一方、交差点付近では対向の右折車が見えにくい状況だった。実際に事故が多発している場所だけでなく、潜在的に事故が起こりやすい場所もあぶり出せる。今後、「ヒヤリハットMAP」として情報を公開し、パソコンやスマートフォンから利用できるようにする。

大阪市と連携し走行データから割り出した危険場所マップ
大阪市と連携し走行データから割り出した危険場所マップ

 各ドライバーの運転についての危険度も判定できるので、「カーナビゲーションシステムなどと連携させて、リアルタイムで運転手にアドバイスを与えていきたい」(長田氏)。

 今後、トヨタ車向けの通信対応のテレマティクスサービス「T-Connect」にも展開していくとみられ、データの取得対象やエリアが増えていく。「検証を重ねて、2~3年後をめどに危険箇所の情報を一般にもAPIで公開していきたい」(長田氏)。データをAPIで公開することで、外部のアプリや他社のクルマのサービスからも利用できるようになる。

 オープンデータとのAPI連携にも取り組む。静岡市が公開する道路に関する災害や規制情報の「しずみちinfo」を共同でWebからアクセスできるAPIとして整備した。「オープンデータを利用しやすい形式まで引き上げて公開し、広く活用できるようにすることにも意義がある」(長田氏)。情報をAPI経由で利用し、カーナビやスマホで通行止めを考慮したリアルタイム検索ができることを確認した。

静岡市とはカーナビからオープンデータを活用するサービスを試した
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