九州を地盤とするディスカウントストアなどを運営するトライアルカンパニー(福岡市)は2⽉19⽇、RFIDタグを利用して、レジをそのまま通るだけで商品の決済ができる実験を始めた。同社の本社内の実験店舗「トライアル ラボ店」で従業員を対象に実施し、利便性と課題を検証する。

 「ウォークスルー型RFID会計ソリューション」として、支援事業者であるパナソニック スマートファクトリーソリューションズ(大阪府門真市)と18日間の実証実験を開始した。

 ウォークスルーレジでは、プリペイドカードを読ませた後、商品を入れた買物袋を通すだけで決済が完了する
ウォークスルーレジでは、プリペイドカードを読ませた後、商品を入れた買物袋を通すだけで決済が完了する

 RFIDは、無線を利用して非接触で電子タグのデータを読み書きする自動認識技術である。それぞれの商品にはあらかじめRFIDに対応した電子タグを添付。商品を買物袋に入れた客は、会計レーンの入口でプリペイドカードをスキャンし通過するだけで精算できる。

3商品の決済が25秒から5秒に

 キーワードは「クイック」である。トライアルホールディングスの取締役副会⻑で今年2月に情報システム子会社ティー・アール・イーの代表取締役に就任した⻄川晋⼆氏は「忙しいビジネスパースンができるだけクイックに短時間で買物を済ませることができるウォークスルー決済の可能性を検証する」と説明する。

 RFIDタグと専用の会計レーンを開発したパナソニック スマートファクトリーソリューションズの代表でパナソニック執行役員の青田広幸氏は、「一般的なセルフレジで3商品をスキャンして会計を済ませる場合25秒ほど時間がかかるが、これを5秒で済ませられる」という。

 RFIDはバーコードを代替できる可能性のある技術で、経済産業省も実証実験での成果に大きな期待を寄せている。

 経産省は2025年までにコンビニエンスストアの全ての商品に電子タグを利用する「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を策定するとしている。その一方でスーパーマーケットのスマート化、いわゆるスマートストアも推進している。実験の発表会に参加した、経産省の藤木俊光商務・サービス審議官は「RFIDはスマートストアを実現する重要なツールの1つ」と指摘する。パナソニックが開発した今回のシステムでは、経産省が中心になって策定しているRFIDの規格を採用する。

課題はタグのコストと書き込み作業

 バーコードと比べた場合のRFIDの長所として、(1)バーコードよりも離れたところからでも読み取りが可能、(2)複数の電子タグの一括読み取りが可能(バーコードは1つ1つ読み取る必要あり)、(3)同じ種類の商品であってもユニークなIDを書き込むことにより単品ごとの識別が可能…といった点が挙げられる。

商品にはRFID対応の電子タグが裏面に貼られている
商品にはRFID対応の電子タグが裏面に貼られている

 一方短所として(1)電子タグの価格が1個当たり10~20円ほどで、商品にバーコードを印刷する場合に比べて高い、(2)電子タグへのデータ書き込み工程に手間がかかる、(3)水や金属などが電波を遮断するため読み取り精度に影響する…などがある。

 今回のシステムでは読み取り精度の向上を図ったという。コストについては「将来的には10円の商品にも電子タグを採用できる水準まで価格を下げたい」(青田氏)としている。

 トライアルはこの実証実験に先駆けて2月14日、⼈⼯知能(AI)やマーケティング⽤のカメラをフルに活⽤した次世代型店舗「スーパーセンタートライアル アイランドシティ店」を福岡市東区にオープンした。この店舗では「スマートレジカート」と名付けたカートで自動決済する仕組みを提供している。今回のRFIDを使った実証実験は、将来型の店舗開発を⾒据えたものである。

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