いすゞ自動車は、昨年10月にフルモデルチェンジした新型トラックに、稼働監視サービスを標準装備。部品に関するデータの活用で故障の原因特定や予兆把握、予防を行っている。

 「トラックなど商用車の部品の使用データを監視するサービスによって、トラックなどの稼働を維持する支援を行おうとしている」

 いすゞ自動車の前園昇データ活用推進部長は、ビッグデータ活用の狙いをこう語る。2013年6月のデータ活用推進部の設立以前から、車両の運行データの活用を進めてきた。

 同社は、昨年10月にフルモデルチェンジした新型トラック「ギガ」に稼働状態の監視サービスを標準装備して、部品に関する様々なビッグデータを収集している。

新型トラック「ギガ」に稼働状態の監視サービスを標準装備した
新型トラック「ギガ」に稼働状態の監視サービスを標準装備した

 稼働状態を3段階に分けて、それぞれに応じて必要な部品データを収集し、それぞれの手法で解析している。3段階とは、(1)故障、(2)故障の予兆、(3)故障の予防、となる。

 故障の原因特定のためには、エンジンを構成する部品100点以上のデータを記録している。1つひとつの部品が不調になると、エンジンが不調になる。エンジンは電子制御なので部品データは取りやすいという。

 原因を特定するためには、故障前後で時系列のデータを監視する。フライトレコーダーのようなもので、故障の前後でアクセルは何%踏んでいたかなどが分かる。

 例えば、「もっと加速したくてアクセルを踏むものの、加速が伴わない」ことから、「エンジンの燃料を噴射する部品に何らかの不調が見られる」と判断できる。動かなくなってしまったときに、故障コードを顧客に送信したうえで、故障の原因を特定する。

 ギガ発売前から商用車の顧客である運送会社などに協力を仰いで、約4万台のデータをリアルタイムで収集してクラウド上に蓄積してきた。

 エンジンが故障した車である部品を交換することで故障が直った場合、その部品の不調がエンジン故障の原因であるとする。こうした修理情報を教師データとして、故障原因を特定する機械学習のアルゴリズムを鍛えている。まだ実証実験の段階だが、現状でも、アルゴリズムの正解率は96%以上。さらに精度の向上を目指している。

故障の予兆を把握し顧客に通知

 故障予兆の段階は、トラックの排ガス処理システム全般の健康状態と不調状態を比べて、何か特徴点はないか、検出すべきデータを決めている。同システムは主に2つある。ススなどのPM粒子を捕獲するフィルターと、窒素酸化物を浄化する装置だ。

 PM粒子を捕獲するフィルターは、掃除機の紙取りパックと同様にいっぱいになると検知。自動的に高温にして燃やし、灰にして量を減らす。灰がいっぱいになると、1回フィルターを外して中の灰を取り出す。

 これまでは「1年ごとに処理しましょう」と顧客に呼びかけていた。ところが、いざいっぱいになるとエンジンの回転数が上がらなくなる。ススを大気に出すことはないが、エンジンが止まってしまう。そこでフィルターをセンシング、つまり高温にしてPMを燃やす機能などが正常かどうか、データを見ている。

 このデータをモニターして、故障の予兆を示す閾値になった時に顧客に知らせる。閾値を決めるのが難しいという。ギリギリ過ぎると整備する前に故障してしまうからだ。

 予防の段階では、ギアチェンジを行うアクチュエーターの回数をモニター。作動回数数百万回になると点検を勧めるようにした。

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