リクルートライフスタイル(東京都千代田区)がデータを生かして飲食店や美容サロンの店舗運営の支援を強化している。顧客の来店数や予約から来店予測をするもので、業務効率向上や課題発見につなげる。早ければ今年4月にも導入する飲食店向けでは、機械学習を利用して予測精度の向上を図る。
リクルートライフスタイルは早ければ今年4月にも、飲食店経営の改善の仕組みを提供する経営アシスタント「Airメイト」の提供を開始する。その中で目玉となるサービスの1つが手元のスマートフォンに、今日から1週間の客数予測を表示するサービスである。
スマホで曜日ごとの予約人数と、予約なしで訪れる客数(予想)を手軽に見て「直近7日間は先週に比べて忙しそう」か「同じように忙しくなりそう」なのかが分かり、店員の人数をどのくらい確保したらいいか曜日ごとに判断できる。さらに「モツ鍋」や「だし巻き卵」といった、人気があるが仕込みに時間がかかるメニューについても直近7日間の注文の予測数が表示されるので、準備作業量を割り出すことが可能になるという。
天気やカレンダーのデータを活用
客数予測では、曜日ごとの客数や天気、カレンダー(日並び)のデータなどを活用して予測アルゴリズムを開発した。「教師あり学習を用いており、多数の店舗の売り上げトレンドや客入りのトレンドも合わせて予測アルゴリズムに学習させるので、店舗の実績や導入店舗が増えれば予測が精緻になっていく」(リクルートライフスタイル)という。
リクルートライフスタイルは2016年夏から、飲食事業を手掛けるダイニングファクトリー(栃木県宇都宮市)の店舗で、データ活用に基づく飲食店の経営改善に関する実証実験に取り組んできた。予測アルゴリズムによる直近7日間の客数予測に関しては、昨年11月ぐらいから実証実験を進めてきた。一定の成果が得られたのでサービス提供開始を決めた。
飲食店の経営では、客数、客単価、人件費率、食材の原価率、クリンネス(清潔さ)の5大指標が重要になるという。「これらの指標を改善するためには、コストの調整、集客、メニュー、オペレーションの4つの打ち手を考える必要があるが、Airメイトを使うことによって最適な打ち手を簡単に講じられるようになる」(Airレジ事業責任者であるリクルートライフスタイルのネットビジネス本部Air事業ユニットの山口順通ユニット長)。
Airメイトの主な機能としては、店舗毎の経営状況が一覧できる「全店舗サマリ」、店舗毎の経営状況の詳細を分析できる「店舗サマリ」、メニューの最適価格提案、新メニュー導入や価格変更後の結果の振り返りができる「メニュー分析」、店舗の経営改善提案ができる「店長向け機能」(スマホのみ)がある。
Airメイトは、無料で提供しているPOS(販売時点情報管理)レジアプリ「Airレジ」の利用が必要。Airレジや、集客と接客を目的とした予約台帳アプリ「レストランボード」を使うことによって蓄積された店舗のデータは、クラウド上で自動的にリアルタイム分析される。その後すぐにAirメイトで店舗の経営状況を把握できるようになる。Airメイトの料金は現時点で未定。Airレジのアカウント数は昨年12月時点で、31万8000に達しているという。
美容業界の重要指標は「再来」
一方、「サロンボード」は美容業界向けのクラウド型予約システムである。予約を通して顧客の来店状況などを把握し、業務を支援するものだ。
リクルートライフスタイルの美容サロン検索予約サイト「ホットペッパービューティー」には7万超の美容サロンが登録している。登録しているサロンであれば無料で利用でき、ほぼすべてが同システムを利用しているという。ホットペッパービューティーを通した予約数は2014年度に3000万件を超え、この3年ほどの間に7500万件超の規模になっている。
サロンボードはネットや電話からの予約を一元化し、予約状況や売り上げ状況を表やグラフで表示する。販促のためのメッセージ配信機能もある。2年前に追加した集計・分析機能により、店舗やスタイリスト別の売り上げ集計や顧客データを基にした経営分析ができるようになった。
予約を使った分析で美容サロンが重要視するのは顧客の再来(リピート)率だ。予約なしや新規客の多い飲食業と違い、一般的に7~8割をリピート客が占めるという美容サロンにとって、定期的に再来してもらうことが経営安定のカギになる。そうなると失客防止が重要になる。同社は、サロンが設定する分析期間から6カ月以上来なかった客を失客として定義している。
リクルートライフスタイルのネットビジネス本部ビューティ事業ユニットクライアントウェブグループの平野亜里子グループマネジャーによると、サロンが気にする顧客来店状況は「失客してしまっている」「失客しかかっている」「定期的だが来店が遅れ気味」「定期的な来店見込み客」の4段階だという。
この4つの段階に当てはまる人数は、顧客の来店サイクルを2年程度のスパンで頻度計算した過去実績と、それを基にした来店予測数をクラウド上で独自ロジックで算出している。平野グループマネジャーは「(この機能を設計する際)店舗にヒアリングを重ねた結果、分析軸はこれらに集約された」という。
サロンは失客しかかっている顧客や、もうすぐ来店すると見込まれる顧客の情報を参照し、ホットペッパービューティー上で顧客が持つマイページへ、あるいはメール経由でクーポンを配信したり、メッセージを送ったりして再来店を促す対応ができる。このターゲティングがサロンボードの特徴の1つである。
集計機能は、Airレジと連携することでリアルタイムにサロン全体の日別・月別、スタイリスト別、メニュー別売り上げなどが分かるものだ。
店舗運営は責任者の感覚や経験に頼る部分があり、顧客データや売り上げ集計を紙や表計算ソフトで管理しているところが多かった。美容市場は1~3席の個人による小規模店舗が8割程度を占めており、人材不足が大きな課題となっている。サロンボードにも3~10席程度の規模の店舗が多いという。
平野グループマネジャーは「省力化、可視化まではできた。今後は現在の機能を磨いていくほか、サロンボードを通じて登録サロンに『メッセージを今配信するといいですよ』と通知するようなレコメンド機能などを考えたい」と話す。