三井住友海上火災保険が提供するテレマティクス技術を活用した法人向け安全運転支援サービス「スマNavi」利用企業が、サービス開始から10カ月で約100社、利用台数は約1万台に達した。利用料金は無料ながら、商談の契機や新規顧客の獲得などに効果を発揮している。

 同サービスを昨年5月に発表した商品本部自動車保険部 フリートチーム 課長代理の大吉悠介氏は、開発の経緯や思いをこう語る。

 「当社の掲げる基本理念『安心と安全を提供し、活力ある社会の発展』の1つとして、事故の未然防止を強く意識している。特に、安全運転に関する取り組みが重要だとは理解していても、何をしてよいか分からなかったり、準備やコストに頭を悩ませたりしている中小企業の支援ができるよう、無償かつ短期間から使えるサービスを作ろうと、2014年末頃から準備を進めていた」

 スマNaviを活用する企業ができるリスクマネジメント(RM)は大きく2つある。1つ目は、同社のスマートフォンアプリ「スマ保」(累計ダウンロード数は1月末時点で約56万6000件)の機能の1つ「スマ保『運転力』診断」利用者の診断結果を、管理責任者がWebで閲覧できること。従業員がアプリをダウンロード後、各法人向けに発行されたIDを入力し、アプリを起動した状態で運転すると、端末のセンサーから取得したデータで加速・減速の安定性やコーナーリングの安定性などの5つのポイントで採点。安全運転のレベルを点数で表示する。

企業の管理者が閲覧できる、従業員の「スマ保『運転力』診断」の診断データ
企業の管理者が閲覧できる、従業員の「スマ保『運転力』診断」の診断データ

 2つ目は企業自動車RM診断だ。管理者が3択式の約50の問いに答えると、三井住友海上火災保険から、管理体制に関するアドバイスが届く。

 この2つの取り組みを通じて、同社の自動車保険・フリート契約における次回契約の保険料を最大6%割り引く、という利用者にとってのメリットも提供する。割引率は(1)法人の全ドライバーの80%以上がスマ保『運転力』診断を実施・送信している、(2)利用者全体で200件以上の診断が送信されている、などの項目を満たしていること、さらには管理体制から総合的に判断されて決定する。実際、利用企業の多くは3%または6%の割引特典を受けている。

事故件数の減少が収益に

 「利用企業数は伸びている。RMに関する初の取り組みとして行う企業が全体の8割で、従業員数は30~100人程度、保有車数が1社当たり20~100台の中小企業が大きな割合を占める」と大吉氏。業界や業種は様々だが、運輸、建設、ルートセールスをするようなメーカーなどが多い。

 他社からも類似サービスは登場しているが、スマNaviの最大の特徴は無償で提供することだろう。開発・維持費として数千万円の費用をかけているが「使っていただくことで事故件数が減ると、当社の収益につながる」と大吉氏は語る。現在、正確な数字を算出している最中だが、事故率が減っているのは確かだという。

 結果、保険金支払にまつわるコストは削減され、スマNavi利用企業の1〜2割を新規顧客として獲得できている。スマホを活用した事故防止サービスは認知度がまだ低いものの、テレマティクスサービスに関心を持つ客は多く、スマNaviは来訪先で話のきっかけとなる「営業ツール」の役目も果たしているようだ。

 「現在、ウェザーニューズから気象情報の提供を受けたり、ヤフーの『Yahoo!カーナビ』へ運転力診断の機能を提供したりしているが、今後も他業種との提携や最新技術を活用した取り組みを検討している。また、昨年10月に提供を開始した従業員の実際の危険運転の映像を使って安全運転教育動画を作成できる『教育動画作成サービス』をはじめとして、お客さまの声を聞きながら、半年に1度のペースで新機能をリリースしていきたい」(大吉氏)

 運転の安全度を測るためのデータは、スマホでもドライブレコーダーなど専用機器と変わらないデータを取得できることが実験から実証できているという。精度が高いデータが低コストで取得できるようになったことで無料提供も可能になっている。サービス自体からの直接的利益は望めなくても、サービスの存在が事業に多大なる貢献をする成功例といえるだろう。

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