日産自動車は2018年から、人事評価と業績の相関関係を2~3年かけてグローバルで分析することを明らかにした。それに先立ち、世界共通の人事評価基準を導入した。
「顧客満足度と従業員満足度がどのように相関しているかとか、その中でどんな個人がどう評価されて、どう業績を上げているのか、その相関を見たいと考えている」
こう話すのは、日産自動車グローバルデジタルHRのラジュ・ヴィジェイ本部長だ。日産は昨年、世界共通の人事評価テンプレートを初めて導入した。まず昨年4月に、社員が目標を設定。中間期のレビューを行い、今年3月に評価作業に入る。その結果として、評価と業績の間でどんな相関関係があるのか、分析できるようになるというわけだ。
2018年頃から2~3年かけて分析していくという。各部署でどんな評価の人材を集めれば、業績向上につなげることができるのか、グローバルで把握できるようになり、日産の人事戦略を大きく強化できる可能性が出てきた。
12万4000人の全社員を対象
日産は現在、世界共通の尺度で人事評価をできる体制になっている。85~90%は共通基準で評価。残り10%程度は各国の法規に合わせた基準で評価をしている。評価制度は貢献評価と業績評価の2本立て。貢献評価は、それぞれの役割に応じて期待される行動を4段階で評価する仕組みになっており、業績評価は、年度の業績目標の達成度に応じて評価する仕組みだ。
世界共通で評価できるようになった背景には、クラウド型人事ソリューション「Workdayヒューマン キャピタル マネジメント(WorkdayHCM)」で世界の全従業員12万4000人を管理していることがある。WorkdayHCMの導入は、2013年の南アフリカを皮切りに、米国、日本、欧州、オセアニア、アジアなどで順次進めてきた。
日本では2014年に導入を開始して、翌年10月にはWorkdayHCMの本稼働に踏み切った。導入以前は、3つの人事システムがグローバルで混在していた。評価基準なども統一されておらず、地域ごとに人事評価をしていた。
システムが共通になったメリットは大きい。世界規模での社員情報の可視化、社内のハイパフォーマンス(優秀)人材をデータベース化した人材プールの構築などを実施できるようになったからだ。
具体的な活用法としては、優秀人材の育成、ローテーション、役職者の後継者育成プログラムなどの人事施策を強化することができるという。冒頭のコメントのように、顧客満足度との関係など幅広い活用を展望しているようだ。アライアンスを組んでいる仏ルノーにも今後、WorkdayHCMを導入していくために、まさに検討に入っている段階だ。
WorkdayHCMには機械学習によって離職リスクを自動算出する機能がある。横軸に離職リスク、縦軸に人事評価をプロットしたグラフを表示して、「評価が高い社員のうち離職リスクが高い社員」などがすぐに分かる仕組みになっている。日産は現段階では、同機能を使っていないが、今後こうした人工知能機能の活用も検討するとみられる。
なお、現状では、パートタイマーやカーディーラーの従業員などはWorkdayHCMによる管理の対象に入っていない。