住宅向けを中心にIoT(Internet of Things)サービスを提供するConnected Design(東京都世田谷区)は、同社製品のセンサーから取得したデータ分析により、顧客の生活パターンの分類や契約継続者に特有の利用方法の発見に成功した。今後、マーケティング支援の新事業の開発や営業時の提案内容の改良などに活用していく。

 同社はケーブルテレビ(CATV)事業のイッツ・コミュニケーションズ(イッツコム)、ニフティ、東京急行電鉄が共同出資して、2015年に設立された。東急線沿線で事業展開するイッツコムの顧客向けに「インテリジェントホーム」として、住宅内の様々な場所に設置したモーションセンサーによる高齢者の見守り、IPカメラによる子供やペットの見守り、スマートロックによる施錠確認や戸締まり、家電コントローラーによるエアコンや照明の制御といったサービスを提供する。

 イッツコムのほか、全国のCATV事業者25社と提携して同様のサービスを提供し、数千人規模の顧客を抱える。最近では、民泊や貸し会議室の事業者へスマーロックのソリューションを提供。利用者のスマートフォンでの解錠を可能にして、事業者と利用者間のカギの受け渡しを不要にしている。

 Connected Designは昨年8月から、カナダのIoTデータ分析会社であるmnuboのソリューションを利用して約6カ月間の実証実験を実施した。mnuboを選んだのは、インテリジェントホームで利用する製品の開発元である米アイコントロール・ネットワークスも採用するなどIoTデータ分析の知見が豊富で、サポートを期待できたためだ。

12世帯13万イベントを分析

 IoTデータ分析は大きく4つのテーマで取り組んだ。1つは「サービス品質の定量化/改善」。品質をモニタリングして機器のトラブルを早期に発見することを目指した。そして「利用状況の把握、改善」により「解約率の低減」を図ること。さらに「顧客行動の把握とセンサーデータの相関」を分析することで、取得データから他社のマーケティングを支援するのに有効な利用者情報が抽出できるかを検証した。

見守りサービス用に住宅に設置した広域モーションセンサーからデータが集まる
見守りサービス用に住宅に設置した広域モーションセンサーからデータが集まる

 取得できるデータは部屋の中での人などの動きを検知するセンサーや、ドアや窓の開閉を検知するセンサー、IPカメラの閲覧といった稼働状況。さらに各機器のバッテリー残量や通信の信号強度や安定性なども入手できる。

 今後の新たな事業の可能性を見出したのが、センサーデータからの顧客行動の把握だ。分析に当たって同社は、6カ月無料モニター参加者の中から12世帯の協力を得て、住宅の種類(集合/戸建て)、家族構成、年代といった属性データと、半年間でたまった13万イベントのIoTデータをひも付けて分析した。

 1日を8つの時間帯に分けて、どの時間帯にどの場所(居間、玄関、台所など)でセンサーがどれだけ反応したかのデータを用いて、クラスタリング分析をした。その結果、朝が突出するが午後にも反応がある「家族世帯」、朝と夜に反応が集中する「共働き夫婦または単身世帯」、終日反応が多い「専業主婦の家族世帯」、深夜に反応が多い「一人暮らし世帯」の4つに分類できた。そのパターンを同社顧客全体に当てはめたところ、約70%はこの4つのクラスターに分類できたという。

センサーの反応状況から顧客の生活パターンは主に4種類あることが分かった ※Connected Design提供資料より
センサーの反応状況から顧客の生活パターンは主に4種類あることが分かった ※Connected Design提供資料より

 企画開発部の林田丈裕マネージャーは、「(調査対象の世帯数が少ないので完璧ではないが)初めの一歩としては非常に大きい」と語る。「定期的なアンケートや国勢調査のようなオープンデータと組み合わせて、(他社が活用できる)マーケティングデータとしての価値あるものにできるのではないか」と展望を描く。活用をする上では、個人情報を落として、一定規模があるセグメントに対してマーケティングしたい企業がアプローチできるように扱う予定だ。

解約を防ぐよう営業を改善

 また、解約した人と継続した人の利用傾向も分析して、機器やサービスの利用の仕方により継続率に違いがあることが判明したという。

 「IoTデータを通じて生活スタイルに適した利用方法が理解できたので、営業時にはお客さまの生活スタイルをある程度定義して、継続率が高まるような使い方を提案していく必要があると思う」と新貝文将社長は語る。

 今後は、IoTデータ分析で得られるデータから、サービス品質の改善や利用動向の把握に役立つ指標を一覧できるダッシュボードをmnuboのサービス上で作り、提携するCATV会社に提供していく予定だ。

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