三菱電機が昨年10月に発売したルームエアコン「霧ヶ峰ADVANCE(アドバンス)FZシリーズ」がヒットし、取り扱い店舗数が当初の約2倍になった。隠れたニーズの掘り起こしに成功したのが勝因だ。

 「流通での評価が高く、当初計画していた取り扱い店舗数が約800店から約1600店と、約2倍に増えた。計画の月産1000台ペースで順調に売れており、今後さらなる上振れも期待できる」(三菱電機広報部)

 三菱電機がFZシリーズへかける期待は大きい。それは、同社が「デラックス」と呼ぶ最上位機のルームエアコンの製品としては、久々のヒットになったからだ。

 「(市場全体で)以前は約3割あったデラックスは約2割まで低下し、ミドル(中級機)の比率が上昇していた。デラックスでなくともミドルで十分という消費者が増えており、社内ではデラックスの見直しを検討してきた」と、静岡製作所営業部の久保田健ルームエアコン営業統轄部長は話す。ちなみにミドルの下はスタンダード(普及機)になる。

 FZシリーズが好調な理由は、最大約3度の異なる温度の風を送る機能を備えているため。つまり、男性と女性など体感温度の違う2人に対して、それぞれに適した温度の風を送ることができる。世界初となる2つのファンを備える「パーソナルツインフロー」を開発。左右独立駆動によって異なる風を送れるようにした。

世界初、2つのファンを備えて異なる温度の気流を送ることができるルームエアコンの内部構造
世界初、2つのファンを備えて異なる温度の気流を送ることができるルームエアコンの内部構造

 例えば、ソファでくつろぐ男性には、弱めの風を送る。離れた場所で家事をする女性には強めの風を送るといったことが可能になる。

 このエアコンは、人それぞれの体感温度を0.1度単位でチェックする機能を持つ。「足元はひんやりしているのに、頭は温まり過ぎてぼーっとするといった暖房の悩みを解消するために、1万8392エリアに分けて細かく温度を見るサーモカメラによって体の部位を細かく判別。冷たい手足に対して温風を送るようにしている」(三菱電機)という。

 2016年1月号でも紹介したように、三菱電機は毎月公表される国内全体のエアコンの販売台数(全需)や日々得られる量販店のPOS(販売時点情報管理)データ及び在庫データ、天候に関するデータなどをフル動員して、需要を予測して販売効率を高めている。日経ビッグデータ「第1回 データ活用先進企業ランキング」の販売部門で1位になった。さらに、ルームエアコンの最上位機で久々のヒット商品を生んだ裏側には、徹底した顧客へのグループインタビューがあった。

グループインタビューを倍増

 量販店の状況はデータでかなり精緻に把握できるようになり、最終的に顧客が何を望んでいるのかをつかむことに重点が移った。ところが時系列で実施しているアンケートからはニーズの変化は読み取れなかった。

 そこで2012年ぐらいから、グループインタビューの実施回数をそれまでの倍に増やした。具体的には、東名阪で10~15人×5グループのインタビューを1年間に約20回実施。お年寄り、男女、大人と子供など「1人ひとりに合わせた空調」という隠れたニーズをつかむことができるようになったのだ。

 今年春には、住宅のインテリアに調和するデザイン性と高い快適性の両立を目指すルームエアコンを発売し、多様化するニーズに応えていく。

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