倉敷市など岡山県の高梁川流域の7市3町が連携し、オープンデータの収集や整形、ビジュアライズなどの活用に取り組んでいる。国も「RESAS( 地域経済分析システム)」でデータ可視化サービスを提供しているが、地元の生活圏の単位での分析を可能にしているのが特長だ。分析者の育成にも取り組んでいる。
7市3町は高梁川を通じて交流してきた長い歴史があり、倉敷市は約47万人、全体で約78万人の人口を擁する。これら地域でデータによる連携を実現するため、「7市3町で協定を結んでデータ形式を標準化した」(倉敷市企画財政局企画財政部情報政策課の福島慎太郎氏)。オープンデータを活用しようにも、集計の時期や単位、ファイル形式などが異なるというハードルを一気になくしたのだ。
これら自治体に加えて、データ活用を推進する一般社団法人のデータクレイドル(岡山県倉敷市)、学術機関や企業などで、高梁川オープンデータミーティングを組織。どのようなデータやアプリ、ビジュアル化が必要かを議論している。
データクレイドルが運営する地域データポータルサイト「dataeye.jp」上で、7市3町について、市町や町丁目でのデータ分析と可視化を可能にしている。現時点でファイル数にして約400のデータが登録済みで、ニーズの高いものは動的なビジュアライズで分析できる。
例えば、「高梁川みらい人口マップ」では、任意の場所を指定して、2010年から2040年まで1年ごとの年代別、男女別の人口を容易に可視化できる(下図中の画面)。設定したメッシュに加えて、町丁目、今後は小学校のエリアの単位での分析機能を追加していくという。

外部データの活用も進めている。例えば、NTTドコモの「モバイル空間統計」の人流データを購入し、エリア内のどこに人が集まっているのかを分析し、結果を公開した。
「倉敷には美観地区に観光に来る人口が1位と思ったが、1位は医療機関だった。驚きだった」(福島氏)。医療機関が他地域からも人を集めていることを認識できたわけで、政策展開に生かせる可能性がある。
地域データの分析者を育成
データクレイドルは2015年10月に設立。ポータルサイトの運営のほか、データの整形や分析・ビジュアライズなどを行うデータサイエンティストの育成にも取り組んでいる。「地域データの分析に長けたサイエンティストを育成するのが目的だ。都市部の人材とは異なるスキルが求められる」(データクレイドルの新免國夫代表理事)。
データの整形については、自宅で作業に取り組むテレワーカーにも委託していく。そのためにデータの整形や分析についてのオンライン講座のコンテンツ開発も進めている。
高梁川オープンデータミーティングは、IoTや人工知能(AI)の活用も2017年度に本格化させる計画だ。
例えば、倉敷市の美観地区にカメラを設置して、混雑度合いや男女比率をデータ化して他の情報と掛け合わせて分析することを想定している。これまで蓄積したデータをAIで分析することも検討中だ。2017年度以降、健康、商業、交通、教育、農業、文化など様々な分野での活用の可能性を探る。