東急百貨店はデータ分析ツールを活用して同社の顧客を購買行動から特徴別に分類し、購入確率が高い顧客を特定してキャンペーンを試験的に行っている。

 これまで特定のジャンルの商品を購入していない顧客を同社は「ゼロ顧客」と呼ぶが、その中から購入の可能性が高い層を特定。昨年10~11月にターゲットを絞って紙のダイレクトメール(DM)を送付したところ、来店による購入率を通常の約10倍に引き上げることができたという。

 利用しているツールは広告代理店の東急エージェンシーが、産業技術総合研究所(産総研)などと開発した「ターゲット・ファインダー」である。テキストマイニングの手法であるPLSA(確率的潜在意味解析)と呼ぶ手法を応用し、ID-POSのデータから似た購買行動をしている顧客を自動的にグルーピングする。

購買行動データから顧客を20分類

 東急百貨店が東急エージェンシーと約45万人のクレジットカード会員などをターゲット・ファインダーで分析したところ、渋谷にある3店舗での購買行動で約20のクラスターに分けることができたという。

 その後それぞれのクラスターの購買データを見ながら、どのような層であるのかを見極めて特徴を命名していく。例えば、「東横店で通勤着や靴を買うOL」「本店で子供服を買う30~40代」「松濤マダム」といった具合である。各クラスターに含まれる顧客は同じような消費行動をすることが想定される。

 今回は化粧品のキャンペーンを展開することにした。比較的化粧品を買うクラスターに属しているが、化粧品を購入していないゼロ顧客を抽出して、DMを送付することにした。「東横神戸屋&ファッション」と「東横通勤着&靴」のクラスターの中の化粧品のゼロ顧客、それぞれ約1000人に送ったところ、いずれも3%台の顧客が来店して購入したという。通常のDMの場合、ゼロ顧客の反応率は0.3%程度と言われており、効果が認められた格好だ。

 もっとも収益への寄与は現時点で限定的だ。今回照準を定めた1000人に対する3%は30人であり、仮に5000円の購入で15万円の売り上げに過ぎないからだ。キャンペーンによっては反応率が1%台であったり、DM送付数が少ない時は反応が「ゼロ」の時もあった。DM1回で5割以上が購入することもある「上顧客」に比べると、規模も購入額も小さい。

 それでも東急百貨店の営業政策室営業政策部営業政策担当の鈴木淳課長は「上顧客に買っていただくのはもちろん重要だが、新規に買っていただく顧客を見つけ出していかないと、縮小していくだけ」と、将来を見据えて取り組む。

 今後はこうしたキャンペーンのデータを積み重ねていく一方で、「売り場作りにも活用できないか検討したい」(鈴木課長)という。現在は、紳士服、婦人服、子供服、化粧品などは、フロアや区画が分かれているのが一般的だが「各クラスターを分析することで、買い回りがしやすい売り場が考案できるかもしれない」(同)と期待する。

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