中古車販売大手のIDOMは1月19日、「WOW!TOWN(ワオタウン)大宮」をリニューアルし、展示車ごとに付与したメタデータを基に顧客のニーズに沿ったクルマを推薦するデジタルサイネージを3台導入した。営業員は顧客に話しかけず自由に見て回れる雰囲気を作りながら、販売台数の増加を目指す。
来店客はまず、店内でiPadを借りる。気になるクルマや装備があればアプリ「WOW!gadget」でクルマに貼られたQRコードを撮影して車両情報を調べられる。お気に入りのクルマを登録し、仕様を比較することもできる。
営業の人数は半減し、コンシェルジュに
リニューアル店のコンセプトは、営業スタッフが話しかけない「セルフでクルマ探し。」だという。WOW!TOWN事業部の野村勝志チームリーダーは、「まずは地域の方に来てもらえる店を目指したい。とはいえクルマ選びは難しい。サイネージやiPadなどで自分に本当にあったクルマを探す手助けをする仕組みだ」と説明する。
さらに、従来の6人の営業員のうち3人は「コンシェルジュ」と役割を変え、売り込みはせずに来店客のクルマ探しを中立的にサポートする役割に徹底する。中古車店は「営業員に売り込まれるので行きにくい」というイメージを変えていく。

店内にはデジタルサイネージ「WOW!checker」を3台設置した。クルマの「デザイン」「使い方」「買い方」がテーマになっており、サイネージ上の専用スペースにiPadを置くと、テーマに関する質問がサイネージのディスプレーに表示され、それに答えていくと、独自のロジックで選ばれたお薦めの展示車がサイネージの画面に表示される。
来店客は気に入ったクルマがあれば、情報をiPadに保存できる。保存した情報を、帰宅後もスマートフォンやパソコンで見られる「WOW!navigator」機能も新設した。
推薦ロジックは現場仕込み
推薦のロジックについて、「データだけだと現場で接客するメンバーからすると『ちょっと違う』というのがある。(データと現場の知見の)両方を足している。人工知能を入れたハイレベルな解析ではなく、泥臭いことをやっている」と野村チームリーダーは説明する。
具体的には、推薦のロジックはWOW!TOWN店員が持つ知識で展示車に振っていくメタデータに基づいている。各車について、諸元表に基づく仕様情報に加えて、どんなデザイン嗜好の人に向くクルマか、どんな過ごし方をするのに向くクルマか(ゆとりある時間、気ままな時間、イケてる時間、愛おしい時間など)、どんな利用シーンに向くクルマか(荷物を多く載せる、送り迎えに使うなど)など、合計6問70個の選択肢のデータを登録している。このデータを基に、予算に関する質問も加えた来店客のデジタルサイネージでの回答から、条件が一致するクルマを選んで提案している。
野村チームリーダーによると顧客がクルマ選びの中で検討するポイントは50項目近くあるという。その中で重要なデザイン、使い方、買い方の3問に集約。さらに「お客様も気づいていなかったクルマ選びのポイントが加われば、お客様も本当の意味で自分に合ったクルマを見つけられるのでは」(野村チームリーダー)と考え、どんな時間を過ごせるクルマかといった、通常の購買検討ではあまり考慮されないようなデータまで展示車ごとに付加していった。

WOW!TOWN大宮は2012年12月に「テーマパーク型の大型展示場」をコンセプトに開店。2016年12月までの4年間で総来場者は約2万5000組、総販売件数は約3000台に達していた。本リニューアルにより、「販売台数は1カ月150~200台の目標を立てている。1年後には300台を狙える店にしたい」(野村チームリーダー)と、販売台数の大幅な拡大を目指している。デジタルサイネージなどは今後、他のWOW!TOWNへの導入も検討する。