NECはレーザープロジェクター型認証装置を開発し、手のひらなどにテンキーの像を投影して、それを指で触れることでの認証を可能にした。操作する指を正しく認識させるために深層学習(ディープラーニング)技術を活用した。
2017年度前半にも、顧客企業と共同で実証実験を開始して同年度後半に実用化を目指す。共同で実証実験する顧客企業としては、大手マンションデベロッパーや大手製造業などが候補に挙がっている。
「バリアフリー認証」などの用途を想定している。例えば、車椅子の利用者はマンションの入口に設置された認証ボードに手が届かないケースがある。レーザープロジェクター型認証装置をドアの上に設置した場合、ドアの前で手をかざすと、手のひらをレーザー光が追いかける。手を止めると、認証テンキーが表示されて認識パターンを入力できる。
同装置はカメラを内蔵しており、差し出した手をカメラで映したときに、手のひらを判別(識別)する技術を使っている。現状では、人さし指から小指をそろえて真っ直ぐにして、親指だけをしっかり開く必要があるという。手のひらの大きさに応じて、そのサイズに収まるテンキーの像を作る。
もう1つの手の指でテンキーに触れると、キーを入力したとみなす。例えば、1(上段の左)から9(下段の右)までのテンキーであらかじめ決められた暗証番号「1357」を入力したかどうかで、認証する。

テンキーの代わりに猫の顔を表示し、右側の耳と鼻を指で触れるとドアが開く、というような子どもにも分かりやすい設定も可能だ。

指の写真を集めて深層学習に活用
指の認識では、深層学習技術を活用している。あらかじめ指の写真を用意して、それぞれの写真に「指である」というラベルを付けて教師データとしている。そして、深層学習アルゴリズムにその教師データを学習させてモデルを作成し、高精度に指を認識している。
今回、教師データは数百枚の写真。NEC社員の指を撮影して作った。「マニキュアをしている指も認証できたが、爪が割れている指の場合は認識できないこともあった」(NEC)という。実用化する際には、教師データの数を増やして、さらに認識精度を高めるという。
今回は、手のひらと指を使った認証だが、足を使う認証も可能だという。その場合は、半導体レーザーで床にキーボードを表示し、足で決められたキーを踏むことで認識パターンを入力する。
レーザープロジェクター認証装置をヘルメットや体に装着して使うケースもある。工場などで熟練者が経験年数の浅い作業者に遠隔で指示する際に、装置のどこのボタンを押したらいいか、半導体レーザーで像を表示して押すボタンを指示することができる。そのために、今後は装置の一層の薄型化や小型化を目指す。