ビジョンモデルの役割とは?

 マツダには今、3台のビジョンモデルが存在する。2010年発表の「靭(SHINARI)」は、その後に発売されたすべてのマツダ車のデザインに強い影響を与えたマツダデザインの象徴だった。2015年発売の4代目「ロードスター」であれ、2017年発売のSUV、2代目「CX-5」であれ、2012年以降に発売されたすべての新世代商品はSHINARIに込めたデザイン哲学を踏襲し、スポーツカーやSUVといったジャンルに即した解釈を行って、群として統一感のある動きのリズムを表現してきた。

 SHINARIの誕生から7年後に発表された最新のビジョンモデル、VISION COUPEは、マツダデザインの次なる象徴だ。SHINARIでは、動きを表現するためにボディ側面に入っていたキャラクターラインが、VISION COUPEにはない。かといって、VISION COUPEのデザインが退屈だったり単調だったりするかというと、けっしてそうではない。

 一見すると単純なVISION COUPEのボディは、これまで表現してきたリズミカルな動きを抑制し、研ぎ澄まされた引き算の美学を追求した造形だ。一切の無駄を削ぎ落としたような凝縮感を与え、極めてシンプルでスピード感あふれるワンモーションフォルムは、ボディショルダーに凛とした緊張感のあるハイライトが走り、光を反射して輝く。

フロントからリアまでワンモーションで描いた大胆なスタイリング。きわめてシンプルでスピード感あふれる、「凛」とした表現
フロントからリアまでワンモーションで描いた大胆なスタイリング。きわめてシンプルでスピード感あふれる、「凛」とした表現
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一切の無駄を削ぎ落としたような凝縮感。これまでの魂動デザインのリズミカルな動きをあえて封印し、引き算の美学を追求した
一切の無駄を削ぎ落としたような凝縮感。これまでの魂動デザインのリズミカルな動きをあえて封印し、引き算の美学を追求した
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 ボディサイドの多彩な映り込みや光と影の移ろいも、豊かな面表現によるものだ。シンプルな立体で引き算の美学を体現するVISION COUPEには走行中、絶えず周囲の景色が映り込み、それらの動きがクルマに生命感をもたらす。2010年のデザイン改革から、マツダ車の表現は、クルマが異物ではなく自然に溶け込む存在へと、より繊細に、より豊かに進化してきた。そのマツダデザインがいよいよセカンドステージに突入し、カタチに生命を与えるという魂動デザインの新たな表現を生み出そうとしている。

キャラクターラインではなく、ボディ側面に反射する光や、周囲の景色の移ろいが生命感をもたらす。2年の歳月をかけて熟成を重ねた「光のアート」といえる
キャラクターラインではなく、ボディ側面に反射する光や、周囲の景色の移ろいが生命感をもたらす。2年の歳月をかけて熟成を重ねた「光のアート」といえる
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