多様な人材を活用したり、逆転の発想で取り組んだり、生活者の視点を重視したりすることで、今までにない新しい市場の開拓に成功している企業は少なくありません。実際に新しい発想で商品やサービスを開発した多くの企業の事例を改めて紹介します。(※「ビジネスのアイデアがどんどん出てくる本」 2017年5月発行の記事を再構成)

大手家電店が台頭し、ネット販売が全盛の時代でも年商約10億円を維持し、粗利率40%の“町の電器屋さん”がある。東京・町田市の「でんかのヤマグチ」だ。多くの電器店が廃業するなか、なぜ顧客を引き付けるのか。

ここで学ぶポイント
  1. データはたくさんなくてもいい
  2. 本当の優良顧客だけにサービスを徹底
  3. 戦略を独自のデータ分析で具現化する

 でんかのヤマグチはパナソニックの系列店で大型テレビを最も販売した店としても注目されたが、店を訪れても一般的な電器店とほとんど変わらない。違いは、約8000人の優良顧客に絞り込み、12人の営業担当者で「顧客の困りごとを徹底して引き受ける」という他社にないサービス志向を打ち出していることだ。

 家電の使い方が分からないとか、製品が壊れたとの連絡があれば、すぐに顧客宅に飛んでいくのは当たり前。連絡がなくても定期的に顧客を訪ね、頼まれれば郵便物を預かってポストに投函したり、買い物を代行したりする。

 顧客が旅行で不在になれば植木の水やりや犬の餌やりなどもできる限り引き受ける。いわば“究極の御用聞き営業”を実践した結果、特に高齢者に好評になり、安売りを強調する量販店やネット販売と違う強みを見せる。実際、今まで積み重ねた信頼関係のため、たとえ他店より製品の値段が高くても、購入してくれる例が多いという。

 店舗の役割は何か。山口勉社長は「ショールームであり、毎週開催するイベントの会場になる」と言う。同社では店頭での野菜や果物の特売会などのイベントを開催。約8000人のうち毎回約20%の顧客が来場し、必ず担当営業部員が対応する。イベントを楽しんで帰る顧客もいれば、そこから商談が始まることもある。顧客が実際の製品を見たいと言えば、すぐに触れてもらうこともできる。