製品やサービスを必要としている顧客にどう届けるか。販売チャネルという外部と協力して顧客に最適な形で届けるポイントを改めて紹介します。(※「マーケティング基礎読本増補改訂版」(2017年5月28日発行)の記事を再構成)
商品を消費者に効率的に届けるため、流通チャネルの統合が必要になってきた。今のところ垂直的、水平的、マルチチャネルという3つの形態が主流。垂直的はアパレルに多いSPA、水平的は銀行=コンビニ提携などが典型になる。
従来の流通チャネルは、メーカー、卸売り業者、小売り業者が統合されておらず、それぞれが独自のやり方や判断で活動を行う。このため、自社の利益の追求に向かってお互いの意向が合わないなど、自社以外のコントロールが難しい場合もある。より効率的に消費者へ商品を届けるためには、流通チャネルの統合が必要になってくる。統合の形態には、大きく3つのシステムがある。
(1)垂直的マーケティング・システム(VMS:Vertical Marketing System)
製造から販売までの流通を一本化し、統合的にマネージメントすることで、効率化する。さらに3つのタイプに分かれる。
1)企業型VMS
自社で行う垂直的マーケティング・システム。自社内にすべての流通チャネルがあるので、完全にコントロールすることができる。企業型VMSの代表例は、ファーストリテイリング傘下のユニクロなどが行う、アパレル業界における製造小売り(SPA:speciality store retailer of private label apparel)である。SPAは、1つの企業が商品企画から原材料の調達、製造、販売まで一貫して行う。販売店からの注文を受け、商品を製造し、店舗へ配送する一連の流れを管理することで製造から販売までの所要期間が非常に短くなる。
2)管理型VMS
流通チャネル内でシェアやブランド力の高いチャネルリーダーが主導してチャネルメンバーを束ね、1つの流通システムを構築する方法。例えば、自動車メーカーなど大企業の下に、部品会社や販売会社などが入り、1つの流通チャネルを形成する場合である。トヨタ式と呼ばれる生産システムに見られるように、生産時にムダをなくすことができる。
異業種提携や複数チャネル保有も
(2)水平的マーケティング・システム(HMS:Horizontal Marketing System)
他業種で関連のない企業同士が提携し、協力し合うことで、自社だけで行うよりもより効率的に消費者に届けられるよう新しい市場を開拓していく統合システムである。例えば、銀行とコンビニエンスストアの関係がそうである。コンビニエンスストアの規模やネットワークを活用してシェアを拡大すべく店内に銀行のATMを設置しており、コンビニ側も、お金を下ろすことで購買につながる機会が増えるメリットがある。
(3)マルチチャネル・マーケティング・システム(MMS:Multichannel Marketing System)
1つの企業が複数の流通チャネルを持てば、チャネルごとに属性やニーズが異なる消費者にアプローチしやすくなる利点がある。一方、規模が大きくなることでコストがかかりコントロールが困難な一面もある。
以上のように、流通チャネルの統合システムはさまざまであるが、時代や状況に応じて新たな形態へと発展させていくことが望ましい。
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