デジタルマーケティングの今を理解するのに欠かせない最新トレンドのキーワードを紹介事例と共に解説。大ヒットムックから改めて紹介します。(※「最新マーケティングの教科書2018」(2017年12月14日発行)の記事を再構成)
フィルターバブルとは、興味関心のある情報にだけ接し、消費者がそれ以外の情報に触れなくなっている状態をいう。ネットサービスの提供者が、顧客満足向上のため、情報をパーソナライズする技術を発展させてきた結果である。しかし、最近では行き過ぎたパーソナライズは、企業のマーケティング上、障害になるとの指摘も出てきている。
消費者が興味関心のある情報や“仲間うち”の情報のみに接し、それ以外の情報に触れなくなっている状態を指す。そうした状態にある人を、外部から見ると、興味関心がある情報のみを通過させるフィルターを、自らの周囲に泡(バブル)のように張り巡らしているように見えることからフィルターバブルと呼ばれる。
インターネット上のサービスは、利用者の利便性を高めることを目的に、さまざまな形で情報をパーソナライズする技術を発展させてきた。例えばインターネットでキーワード検索をした際に、過去の利用データなどに基づいて表示する検索結果を変える技術は、その典型だ。スマートフォン向けニュースアプリなどで、利用者が選択した興味関心のあるジャンルのニュースだけを示す機能も、今では当たり前になっている。
さらに、受け取りたくない情報を指定できるサービスも増えている。「LINE」の利用者が、ある企業アカウントを友だち登録した後、そのアカウントをブロックするようなケースだ。こうした情報のパーソナライズをインターネットサービス提供者が進化させてきたのは、顧客満足の観点からは、当然のことだといえる。
しかしここに来て、行き過ぎたパーソナライズは企業マーケティングにとって障害になるという指摘が出ている。販売促進の色が強い情報はフィルターバブルに跳ね返され、ますます届きにくくなっているからだ。消費者に興味関心を持ってもらえる情報とは何か。どうすれば消費者と“友だち”のような関係性を持てるのか。企業はマーケティングの在り方を見直す必要に迫られている。
本田哲也著
ディスカヴァー・トゥエンティワン 1600円
著者が2009年に発表した「戦略PR」の考え方を、さらに発展させ、詳細に解説した書籍。消費者の興味や関心に寄り添いながら、伝えたいメッセージを空気のように自然に伝えるという戦略PRの考え方は、フィルターバブルの突破に役立ちそうだ。