デジタルマーケティングの今を理解するのに欠かせない最新トレンドのキーワードを紹介事例と共に解説。大ヒットムックから改めて紹介します。(※「最新マーケティングの教科書2018」(2017年12月14日発行)の記事を再構成)

実店舗とアプリなどを融合させたオムニチャネルの取り組みは発祥の地、米国で既に当たり前になりつつある。マツモトキヨシやローソンなどをはじめ大手小売企業が次々に取り組むなど、日本でも質の高い顧客体験の提供を目指して、本格的なオムニチャネル時代の幕開けを迎えた。

 オムニチャネルとは、実店舗やECサイト、スマートフォン向けアプリ、ソーシャルメディアといった顧客との接点を統合し、時間や空間の制約なく、質の高い顧客体験を提供することを目指すというコンセプトだ。

 言葉としては2000年代初めからあったが、11年に米国小売業協会が使い始め、一般にも知られるようになった。ここ2年ほどで国内にもかなり浸透してきており、実店舗を持つ業態の企業にとって避けては通れないテーマとなった。

 米スターバックスは会員証、リワード(ポイント)、決済機能などを有するスマートフォン向けアプリを提供しており、アプリの利用率などの数値を経営指標にまで据える。スターバックスでは15年第2四半期にアプリ経由の売り上げが全体売り上げの20%を超える規模に到達している。

 日本でも、アプリで顧客接点を作る動きは急速に増えており、この1~2年で見ても、ローソン、マツモトキヨシ、日本トイザらスなどの大手小売企業が相次いで会員証機能を持つアプリを提供。顧客IDや分析基盤を統合する動きが見られた。

 オムニチャネルで質の良い顧客体験を実現するには、顧客IDの統合、在庫情報の一元化/リアルタイム化、配送/受け取りインフラの整備、あらゆるチャネルに対応できるカスタマーサポート体制の構築といった要素が欠かせない。

 似た概念に「O2O(オンラインtoオフライン)」がある。こちらは日本で生まれたものだが、概念としてはオムニチャネルと重なることが多い。

参考になる本
『無印良品 最強のオムニチャネル経営』
川又英紀、小林暢子著、日経情報ストラテジー編集
日経BP社(Next ICT選書) 500円(Kindle版)
早期からスマートフォンアプリによる会員証をリリースしており、国内小売企業のデジタル戦略における模範例となっている無印良品。アプリがフォーカスされがちだが、バックエンドの整備など、やはりオムニチャネルの実現には全社を挙げた取り組みが必須であることが分かる。
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