デジタルマーケティングの今を理解するのに欠かせないテクノロジー関連のキーワードを事例と共に解説します。大ヒットムックから改めて紹介します。(※「最新マーケティングの教科書2018」(2017年12月14日発行)の記事を再構成)
動画コンテンツと広告を別々のサーバーから送り、ユーザーの手元で統合する通常のネット広告と異なり、動画コンテンツと広告をあらかじめ1つに結合して配信する方式をいう。略称はSSAI。RTBなどの主流アドテクを利用できないため傍流とされてきたが、今後は脚光を浴びる可能性がある。
アドブロックの影響を受けずライブ配信にも向く 広告主の動向が普及の鍵に
通常のネット動画広告と異なり、動画コンテンツと動画広告をCMS(コンテンツ管理システム)サーバーで1つに結合し、ユーザーの元に配信する動画広告の方式を指す。略称はSSAI。
数年前からある技術だが、スマートフォンユーザーの間でアドブロックが普及している中、ネット動画のライブ配信が増えてきたため、このところ注目が集まっている。
この技術を使えばアドブロックの影響は受けない。アドブロックは、ユーザーの見ているWebページをスキャンし、動画広告を送り出すアドサーバーにつながる部分を防ぐ。SSAIはアドサーバーを使わないため広告はブロックされないのだ。
一方、DSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)とSSP(サプライ・サイド・プラットフォーム)を使ったRTB(リアルタイム入札)や、リターゲティング広告などに代表される現在のアドテクノロジーのほとんどは、ユーザーの手元で動画コンテンツと動画広告が結合されることを前提に成立している。このため、主流のアドテク活用を前提にするとSSAIの利用は技術的に難しい。利用する場合は、動画広告を出稿する媒体を指定する方式を採ることになる。
それでも2017年6月、静岡新聞社と静岡放送がJストリームのSSAIサービスを使い、ゴルフトーナメントのライブ配信に動画広告を入れるなど、関心を寄せる広告主は多い。
主流のアドテクを利用できないため、現在は傍流と見なされるSSAIだが、広告主企業などがさらに顧客志向を強めた場合、改めて脚光を浴びる可能性はある。
横山隆治、榮枝洋文著
翔泳社 1800円(税別)
デジタル化の進展で大転換期を迎えている広告ビジネスの世界を取り上げ、これまでとこれからを俯瞰した1冊。サーバーサイド動画広告挿入の可能性など、時代の先行きを見抜き、自己変革に努めるものにはチャンスがあることが分かる。