デジタルマーケティングの今を理解するのに欠かせないテクノロジー関連のキーワードを事例と共に解説します。大ヒットムックから改めて紹介します。(※「最新マーケティングの教科書2018」(2017年12月14日発行)の記事を再構成)

AI(人工知能)を活用して、人間との対話に自動応対する対話型プログラムのことを指す。チャット型コミュニケーションツールの利用が広がる中、マーケティングにチャットを取り入れるニーズも拡大中だ。LOHACOやライフネット生命など、顧客への対応をチャットbotに任せ、成果を上げている企業も出始めている。

AIを活用した対話型ロボット LOHACOやライフネット生命などが活用

 AI(人工知能)を活用して、人間との対話に自動応対する対話型プログラムのこと。チャットbotの「bot」はロボットが語源。「LINE」「WhatsApp」といったチャット型コミュニケーションツールの利用が広がる中、マーケティングにもチャットを取り入れようというニーズが拡大している。ロボットによる対話の自動化によって、コストを抑えつつ、顧客サポートや情報の検索といったコミュニケーションを人間に代わって担えるとして、期待が高まっている。

 そうしたチャットbotを活用する動きが、日本企業の中でも広まりつつある。特に目立つのが、顧客から寄せられた質問に応対することで企業の効率化を図るだけでなく、チャットbot上に独自のキャラクターを設定し、顧客とチャットbotで対話を進めることで、顧客について深い情報を得ようという動きだ。

 例えばローソンは、マイクロソフトのAI「りんな」の技術を活用したチャットbotに力を入れている。AI技術を基にローソンクルーのあきこちゃんという公式キャラクターを設定し、ユーザーがLINEアカウント上で会話を楽しめるようにした。こうすることで、ユーザーのLINEの利用頻度を引き上げ、その反応をデータとして蓄積もできるというわけだ。

AIが実際に利用されている領域

図1 チャットボットのイメージ
図1 チャットボットのイメージ

LOHACOはマナミさん

 アスクルの運営するEC(電子商取引)サイト「LOHACO」も、カスタマーサポート領域に、顧客からの質問に自動応対するチャットbotを導入。24時間365日、問い合わせに対応できる体制を作った。

 もっとも導入当初は、チャットによる問い合わせが一般的ではなく、すぐには利用が進まなかった。そこで、より親しみを持って問い合わせをしてもらうために、「マナミさん」という女性のキャラクターを作った。これが奏功して、チャットbotによる問い合わせ対応の利用者は増加していったという。

 マナミさんが利用者から支持を集めているのは、単に質問の回答結果を得られるからだけではない。ECサイトの利用とは無関係の日常会話にも、臨機応変に応対できることが利用者から受けている。例えば、「AIですか?」と尋ねれば「AIではなくマナミです」と答える。「好きな食べ物は何ですか?」という問いに対しては、「私はフルーツグラノーラが好きです。毎朝ヨーグルトと一緒に食べています」と返答する。

 これらは会話のログから寄せられた質問を分析し、新たに回答を追加することで対応している。また、チャットbotでは想定されていないような、より詳しい回答を求められた場合には、有人対応に切り替わる仕組みも導入した。

 この結果、送料や領収書の発行といったよくある質問ならば、チャットbotによる自動応対で完結。今や全問い合わせの約3分の1にチャットbotが対応しているという。

 また、ライフネット生命保険も今年1月、LINE上に開設した自社アカウントに、チャットbotによる自動応対機能を導入。見積件数が導入前と比較して1.5倍になるなど、早くも成果を上げている。

 チャットbot導入を検討する企業は今後も増えるだろう。導入の決め手となるのは、やはりAIの性能。先行する米国勢に対する日本企業の対抗策が待たれるところだ。

右からローソン、ライフネット生命保険、LOHACOのチャットbotの画面
右からローソン、ライフネット生命保険、LOHACOのチャットbotの画面
参考になる本
『チャットボット AIとロボットの進化が変革する未来』
金城辰一郎著
ソーテック社 1580円
現在、急速に普及が進むチャットbotが今後、Webの世界でどのような変化と新たなビジネスの潮流を生み出すのか、最新の事例も交えて詳しく動向を解説した書。モバイルチャットがアプリを代替する可能性にも言及する。
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