デジタルマーケティングの今を理解するのに欠かせないテクノロジー関連のキーワードを事例と共に解説します。大ヒットムックから改めて紹介します。(※「最新マーケティングの教科書2018」(2017年12月14日発行)の記事を再構成)
スマートフォンによる視聴が当たり前になり、動画をマーケティングに活用する企業が増えてきた。オウンドメディアへの動画コンテンツ掲示や動画広告の出稿など、手法はさまざま。顧客に合わせて中身を差し替えるパーソナライズド動画など新しいサービスが次々に提供されている。
スマートフォンによる動画視聴が当たり前になった結果、動画を配信してマーケティングを展開する動きが広がっている。動画コンテンツを作って自社Webサイトに載せ、同じコンテンツをWeb動画広告として出稿したり、YouTubeやFacebookなどのソーシャルメディアに動画広告として出稿したりする。
企業が動画を使ったマーケティングを重視し始めたのは、テキストや写真などに比べ、見た人に強いインパクトを与えると考えているから。以前は動画のデータ量が通信環境に対して大き過ぎ、簡単に視聴できなかったが、スマホの普及と通信環境の向上で、いつでもどこでも簡単に動画を視聴できるようになったことが、追い風になっている。
実際、動画広告市場は拡大基調にある。オンラインビデオ総研とデジタルインファクト(東京・文京)の調査では、2016年の動画広告市場は前年対比157%の842億円で、うちスマホ向けが全体の約7割を占める見通しだった。形式別では、動画コンテンツの流れに沿って自然に表示される「インストリーム型」と、ソーシャルメディアのタイムライン上で再生される「インフィード型」が主流になる見込みだ。
動画広告市場は順調に成長
イベントのライブ配信に出稿
効果的な動画マーケティングを進めるには、自社サイトに動画を載せるのに加え、ソーシャルメディアを有効活用したい。そのためのメニューやソリューションも登場している。
例えば国内に4000万人のアクティブユーザーを抱えるツイッターはライブ配信に特に力を入れている。17年1月、YouTuberプロダクション最大手のUUUM(東京・港)が主催する、YouTuberとファンが一堂に会するイベントの最終公演2日目の模様を、日本で初めてTwitter上でライブ配信し、その中に2社の動画広告を出稿した。タイムラインの上部に動画のライブ配信や動画広告が示され、下部にツイートが流れる仕組みだ。
これは、幅広い拡散が見込めるイベントやスポーツの主催者とツイッターが交渉してライブ配信を実現し、そこに視聴者とターゲット層が重なる広告主から動画広告を出稿させ、収益につなげるモデル。今後も、強力な動画コンテンツを活用したこうした広告メニューは増える見通しだ。
一方、パーソナライズド動画といわれるサービスも始まっている。これは動画の中の一部を視聴する顧客に合わせて差し替え、マーケティング効果を引き上げるもの。企業が持つ顧客の名前・住所といった属性やソーシャルメディアが保有するターゲティング情報などに基づき、動画の一部、例えば名前を示す箇所を差し替え、一人ひとりに適合した動画を、低コストで制作・配信する。
例えばアウディジャパン販売(東京・世田谷)は、パーソナライズド動画サービスの欧米最大手アイドムと提携した、Web動画制作会社のモバーシャル(東京・渋谷)と組み、Facebookが持つオーディエンスデータを活用して100パターン以上の動画を制作。パーソナライズド動画広告として10月28日からFacebook上で配信し始めた。パーソナライズド動画は通常の動画に比べ、CVR(コンバージョン率)や完全視聴率が急増するといわれる。こうしたソリューションが増えれば、動画マーケティングが当たり前という時代の到来は早まりそうだ。